安心感の研究 by 暖淡堂

穏やかに日々を送るための試みの記録

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現代詩

【現代詩】「…しずかな…」 雪を聴く 現代詩の試み

…しずかな… あさが しずかになり… (…おとが、とおくなり… あめ、みぞれ、そして ああ、 ゆきだ… ***** これも2007年の12月に書いた詩です。 寒い冬だったようですね。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 …

【現代詩】「殻」 ここ、ではない場所へ 現代詩の試み

殻 硬い殻から冷たい雨の中に連れ出され置き去りにされた犬よりも悲しい目をしているのではないか雨雲を見上げることが出来ないそれすら僕の目には眩し過ぎるのだあの硬い殻はもうすぐ飛び立ってしまう ***** 2007年の12月に書いた詩です。 それが曇り…

【現代詩】「また、雪」 同じことを話し続けられる幸福 現代詩の試み

また、雪 日々は一日ずつ過ぎているのに 二四時間きちんとかかっているはずなのに 帰宅する電車の中では なんて長い一日だったのかと思ってもいるのに 一月はあっという間に過ぎてしまい 一年も、気がついたら また同じ季節になっていて 妻と靴底の話をして…

【現代詩】「代 償」 対立の涯の砂漠のイメージ 現代詩の試み

代 償 テレビでは 相変わらず 誰かの子分になりたい人たちが 自分の子分を引き連れて歩いている まるでパレードのような姿が 映し出されている 我々はただ、微かな空腹感を堪えながら ぼんやりと眺めているだけだ そして、そんな行為の代償を 気づかずに負わ…

【現代詩】「港と駅のある街で 4」 吹雪の最中に聞こえる泣き声のこと 現代詩の試み

港と駅のある街で 四 雪が重く練りこまれた空間の底を揺するように 遠い汽笛が微かに響く 不意の風が 雪の落下する軌跡を崩す 灯りを消した駅の隅の暗がりで 何かが泣き続けている また、汽笛が聞こえる と、暗がりで立ち上がるのは 小さな子供だ そして 雪…

【現代詩】「港と駅のある街で 3」 零下の街に降り積もる雪 現代詩の試み

港と駅のある街で 三 不意に音が止む と 空間を埋める雪に遮られていた 街燈の光が浸潤するように 雪片と雪片との間の空隙に広がる そして 全空間が乳白色に輝き始めたとき (…微かな羽音… 赤信号が一斉に明滅を開始する と また雪が 音が そして息苦しい空間…

【現代詩】「港と駅のある街で 2」 零下の街に降り積もる雪 現代詩の試み

港と駅のある街で 二 零下の街を 灰色の男たちはさまよう 雪は激しく降り続け 大気に濃密に練りこまれる 置き去りにされた何台もの車に 雪は厚く降り積もる 灰色の男たちは車の上に這い上がり 雪で視界の閉ざされつつある周囲を 空洞になった眼窩で 不安げに…

【現代詩】「港と駅のある街で 1」 北の街の一夜の情景 現代詩の試み

港と駅のある街で 一 雪の激しく降る夜 誰もいなくなった駅に ひっそりとたどり着いた列車から 灰色に膨れ上がり 眼球の溶け落ちた男たちが 何人も、何人も降り立ち 暗い改札口を抜けて 雪の降り続く街の中にさまよい出るのだ ***** 冬の夜の幻想。 風…

【現代詩】「砂/すな」 ここ、ではない、遠い場所への視線 現代詩の試み

砂/すな まわり 時に 落ち 休日の午後 冷たく 影 流れ込んで 春は まだ 土の下にも きていない 期待などしない 鴉だけが その鳴き声に 時の 細い糸 祈る 木々の先 巻き込まれるのを 匂わせて しかし 遠く しかし 古く なにを 思い浮かべる ふるかえる 子供 …

【現代詩】「坑 道」 境界を突き抜けるもののイメージ 現代詩の試み

坑 道 「私」の部屋の地下を 灰色に膨れ上がった男たちが 掘り続けている 硬い地層には 肉が剥がれ落ち 骨だけになった指を突き立て 柔らかな腐葉土を 歯の抜け落ちた 口いっぱいに詰め込みながら 少しずつ、少しずつ あの北の駅に向かって あの霧に包まれた…

【現代詩】「距 離」 自然との境界が揺れているイメージ 現代詩の試み

距 離 朝 目覚めて ホテルの部屋の 窓ガラスに当たり 砕けながら滑り落ちる 雪に気づいて 感じたのは 寒さ ではなく 遠さ、だった 灰色の建物の壁に囲まれた空間を 雪が舞っていた とても静かだった そして 不意に 一人きりだった ***** ミュンヘンのホ…

【現代詩】「気 配」 自然との境界が揺れているイメージ 現代詩の試み

気 配 夜の 暗闇の中で 息を潜めていた その時 身体の表面を ざわざわと激しく 波立たせたのは 深い底から 沸き上る瞬間を ひっそりとうかがう 黒い毛皮の 獣の (…ケハイ… ***** 自然と人間の生活との境界が振動しています。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) …

【現代詩】「風にしなる」 ただ立ち尽くす男のイメージ 現代詩の試み

風にしなる 枝も葉も 何もかも 落としてしまった 竹のような男が 風に吹かれ しなる しなる 風を切る音を あたりに 撒き散らして 足を地面に踏みしめて しなる しなる 湿った 雨をはらんだ風に 煽られて 太い うなり声を 吐きながら しなる しなる しなる 枝…

【現代詩】「今年の雪」 雪があるからこそ 現代詩の試み

今年の雪 子猫が駆け回った あの秋の田の上に 雪が厚く深く 降り積もった この雪もまた春には溶け 田に張られた水は 陽に照らされて温むのだろう 夏には咽かえるほどの 稲の息を嗅ぐのだろう いつものように また季節は巡るのに 今年の雪は どうしてここまで…

【現代詩】「緩やかにずれる」 すれ違う異国の匂いのイメージ 現代詩の試み

緩やかにずれる 夏の夜 しつこく続く歯茎の痛みが 「私」の中の何かをざわつかせ それに激しく促されて 不意に 前のめりになりながら 遥かな涯の叫び声を聞きながら 「私」と「身体」が 緩やかにずれる 痛みとともに 置き去りにされたのは 「私」、の方だっ…

【現代詩】「ベンチ」 すれ違う異国の匂いのイメージ 現代詩の試み

ベンチ 目の前をたくさんの人たちが通り過ぎていく僕はベンチに腰をおろしたままそれをただ見ている少しだけ目を閉じてみる異国の言葉が周囲を埋めていたことに気づくそしてここが僕のあの国につながっていることにもきっと、あの部屋で僕の家族も目を閉じて…

【現代詩】「風と雪」 季節の間に雑に積もるものたちのイメージ 現代詩の試み

風と雪 足元を駆け抜ける子犬を追って ただズルいだけの気配が 落ち葉をめくる その冷たさがとても雑だ 匂いだけで降っていた雲のカケラが 首筋を撫でながら なぜか笑う 透き通ったアマい声で 季節の変わり目に 騙されるとしたら 重さのないものだけが この…

【現代詩】「鞄」 手放せたもののイメージ 現代詩の試み

鞄 不意に 足が重くなり 乗り込むつもりの 電車に乗り遅れてしまう プラットフォームで 次の電車を待っていると もう電車は来ないとアナウンスがある あきらめて 立ち去ろうとすると 僕の鞄を持った男が 急ぎ足で階段を上っている 声をかけようとしたが なぜ…

【現代詩】「雪の処方箋」 暗い空から剥がれ落ちる白い雪のかけらのイメージ 現代詩の試み

雪の処方箋 雪を処方 いたしましょう 雲から剥がれた 淡雪を 月のきれいな 静かな夜に 一粒目尻に 置くのです その冷たさが 盛り上がり 温もりになって 流れたら 明日の朝に 目覚めるための 静かな夢を 見てるでしょう ***** 今回の詩は、以下の詩集の…

【現代詩】「街の表皮」 層状の風景と層間を満たす液状の現実のイメージ 現代詩の試み

街の表皮 机の表面の奇妙な凹凸を指でなぞると プクリ、と水泡状に膨らみ 指で押されて、 移動する それをさらに押し続け 机の端まで追い込んだ後 そのまま床に落とす と、それはゼリー状の塊になって 床でペチャリと音を立てる 私はもう、浮遊する眼球にな…

【現代詩】「駅までのわずかな距離を…」 鉄道という消化器のイメージ 現代詩の試み

駅までのわずかな距離を… 駅までのわずかな距離を 歩ききることができない朝 僕を押しのけ 追い越していった人たちの顔が 今、僕を置き去りにした電車の窓を 稠密に埋めている 埃っぽい灰色の街に立ち尽くす僕は もし僕のこの身体を動かしてくれるのであれば…

【現代詩】「駅 は …」 鉄道という消化器のイメージ 現代詩の試み

駅 は … 駅は 日々たくさんの人を飲み込み 吐き出している 巨大な循環器の出入り口だ 人々は 手にした重い鞄に詰め込んだ 豊富な栄養を 時には致命的な毒素を 線路に沿って持ち運ぶ 血球のようだ 若く 力に満ちた人々が集まる駅は 騒々しく 栄養が溢れ いつ…

【現代詩】「沙汰無し」 終わるものと始まるものの温度差のイメージ 現代詩の試み

沙汰無し 駆け回って何も得られない日々が続き 君は元気ですか僕は立ち止まります 夏はもう盛りを過ぎました もうこんなに静かです 僕もしばらく言葉を節約します 力を溜めるため ***** 文学が好きな方なら、以下の詩集はおすすめです。 働きながら、詩…

【現代詩】「そして、舞う雪…」 北の涯の凍りついたような砂浜と雪のイメージ 現代詩の試み

そして、舞う雪… (…底で騒ぐ突起の群… (…その、一塊が… (…不意に、沸騰する… (…そして、崩れた底のさらに下に… (…新たな「底」がのぞく… 浮上する泡は 表面が突起で覆われた 「まるで袋」のように 膨張を続けるのだ 打ち上げられるのは 北の、遠い涯の …

【現代詩】「根」 遠い北の駅の待合室と、線路の上を季節の変わり目に吹き抜ける風のイメージ 現代詩の試み

根 冷たい風の吹く朝 遠い北の町を目指して 細い指で地層の境目に指を差し込む 狭い穴の中が 生ぬるい呼気で湿り 汗が土を固め 指先を押し返す 呻く口に、ざりざりとした土が入り 吐き出そうとして 最後の息を吐いてしまう 重い、窒息 と、爪が剥がれ 温かな…

【現代詩】「花」 酔った花が光のようにこぼれ落ちるイメージ 現代詩の試み

花 酒気まじりの風が その枝の先で微かな渦を巻く、 と、 空間が小さく揺れ、 波紋のように生じた襞の間を、 滑り落ちるように、 たくさんの花が、 一斉に… 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazo…

【現代詩】「白き峰」 人間の弱さを知らせるもののイメージ 現代詩の試み

白き峰 駐車場の手摺越しに 白き峰々が、見える 人々の暮らしを 不意に呑み込む 大量の雪を被り 一層聳え立つ 大きな 白き峰々が、見える 冷たい風の午後 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon …

【現代詩】「秋の駅/豊沼」 渦を巻く季節の中心にある故郷のイメージ 現代詩の試み

秋の駅/豊沼 空間を埋めるいくつもの勾配から そのざわめきから 瞬間に凝り、ゆっくりと とてもゆっくりと 滑り落ちる小さな無数の滴の群を その静かな流れを 層流状態に落とし込むのは 冷ややかな激しさ 滴は加速する螺旋を描きながら寄り集まり 青い球状…

【現代詩】「変 域」 境界線上を滑落しながら発熱する液滴のイメージ 現代詩の試み

変 域 その白い膚に凝るように寄り集まる滴は 互いの境界を食い破りながら成長し 表面を泡立てながら発熱する 越境する水銀球になる それ、 は、 ゆっくり、 と、滑落しはじめる… 水銀球は 産毛の上を転がりながら 急激に発熱し不意に泡立つ転移点に到る 乱…

【現代詩】「毘売塚(ひめづか)」 冷たい水の底に横たわる古代の丸木舟と月のイメージ 現代詩の試み

毘売塚ひめづか 紺色の雲の端が朱色に炙られ 渦巻き身を捩る 遠い涯から冷たい風が (…不穏な… (…底の、獣を目覚めさせる… 空から剥がれ落ちた風が 砂浜を舐め続ける薄い波の舌先を 白く、まだ幼い足で踏みしめながら 水平線の先を睨み続ける少年は (…落ち…

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