還暦記:暖淡堂

還暦前後の日々の記録を中心に

現代詩

【現代詩】「街」 掘り返され続ける都市のイメージ 現代詩の試み

街 空間を切り分ける硝子の目盛りが震え 濁りのない雨が凝り落ち (…膨張し… 「底」からの微かな音に揺れる 臆病な「私」達を温かく濡らし窒息させる …宙を走る文字はどこでも構わない… …「今」を「物」にして… …それがいくらになるかと… …誰のものにもなれ…

【現代詩】「交叉/涯」 世の混乱の風景を切り取ったイメージ 現代詩の試み

交叉/涯 (…雨 湿った埃の匂 今とともにある過去の 遠い地平の涯で集められた 人々の言葉が震えるいくつもの部屋を 不意に滑落する勢いで通り過ぎるとそこに 深い、廊下 凍えて 二つめの窓の前 風の音 目が、凝り 石の壁を滑り落ち砂礫に蹲る片足の少年は …

【現代詩】「覚醒/巻き込み」 「私」以外のものからの距離が「私」の形を決めているイメージ 現代詩の試み

覚醒/巻き込み 「私」は多くの犯罪者を探りだした探偵であった。「私」が、自らの正義で裁いた多くの顔が、「ここ」の遠い周縁部を埋めている気配が届く。生きているもの、すでに死んだもの、あったこと、なかったこと、あってもよかったこと、ありえなかっ…

【現代詩】「崩れる海」 境目に忍び込むもの 不意に亀裂から顔をのぞかせるもののイメージ 現代詩の試み

崩れる海 静かな海 何度も折れ曲がりながら 熱に 割り込んで行く 崩れた 船を従えて 白い鳥の 紙屑のように飛ぶ 朝 気がつけば 玄関先に 忍び寄った 深い海に驚くのを すでにすべてが手遅れの そんな朝 みていたはずの 夢も思い出せない 潮風で 喉が痛いので…

【現代詩】「出雲」 古代の舟に横たわるもの 暗い夜を照らすもののイメージ 現代詩の試み

出雲大社 出雲 社の背で、巨大な山が静かに空に滑落する。溶ける緑が渦を巻く。山が尽き、社がそれを追う。そして、足元の柔らかな土が揺れる。と、風。 古代の船が、真新しい木肌をみせて、宙に浮かぶ。暗い底に横たわる女の、白い目が開く。 …鎮まり給え… …

【現代詩】「桟橋」 誰も戻らない場所が確かにあるということ 現代詩の試み 

桟橋 桟橋 …静かに… 雨に濡れる桟橋の先で 溢れようとする海に何冊かの本を沈めると 水の底から 古い写真が一枚 ゆらりと浮び上がり 冷たい風が 高い空から剥がれ落ち ふと 遠くから呼ばれた気がして振り返った あの日の (…いつも ここ にある… 灰色の浜辺…

【現代詩】「偽私」 発熱するだけの機械 なにも生み出さず 

偽私 (…ぬるい寝床を走る繊毛… (…いくつもの眼、小さな歯… (…肌を焦がしながら分断し… (…、…、眠れない…、…、… 紐が捩れながら束になり 甘く肉の焼ける匂を追い 分散し数匹の蟻になり 穴を開け押し広げ潜り 「層」の断片を掘り出し 膨れ上がる赤い腫瘍 …

【現代詩】「駅/発酵」 旅立つ人も、帰り着く人も、もう誰もいない駅

駅/発酵 (…ああ、季節が、かわる… …散り積もった枯葉、を、掻き分けるように掘る、と、底、に… …じゅくじゅく、と、醗酵し始めた厚い腐葉土の層、さらにその、下、に… …雨、が、近づいてくる、その響きが指先に伝わる、雨は、深い底で、降っている… …鼻、…

郷里への想い 帰り着けない場所としての、遠ざかり続ける空洞

こんにちは、暖淡堂です。 Takachiko!Takachiko!暖淡堂の方で、現代詩やエッセイを続けて公開しています。 dantandho21.blogspot.com 記憶の中で、暗い仏間にはいつも、祖母が寝ている。 祖母は布団から細い腕を出して、野球のボールを握っている。 あの家は…

書店で楽しそうに過ごす子供の姿に、心を動かされた日

こんにちは、暖淡堂です。 Takachiko!Takachiko!暖淡堂の方で、現代詩やエッセイを続けて公開しています。 dantandho21.blogspot.com 自分自身が読書が好きで、本が好きである。 なので、書店に出かけることが多い。 子供がまだ小さかった頃から、いつも一緒…

冬の訪れを告げる音のイメージ 静かな夜に聞こえてくるもの

こんにちは、暖淡堂です。 Takachiko!Takachiko!暖淡堂の方で、現代詩やエッセイを続けて公開しています。 dantandho21.blogspot.com 今回は二作品を紹介します。 冷たい雨の降り続く夜。 耳を澄ますと、一定のリズム感を持った音が聞こえてくる。 眠りに落…

旋回する曲線のイメージ 絵画の線に導かれるように

こんにちは、暖淡堂です。 Takachiko!Takachiko!暖淡堂の方で、現代詩やエッセイを続けて公開しています。 dantandho21.blogspot.com 季節の変わり目に、思いがけず強い光が空から射していることに気づく。その眩しさに瞼を閉じると、網膜に数本の線が描かれ…

その場で跳躍し続けるものというイメージ ジル・ドゥルーズの反響

こんにちは、暖淡堂です。 Takachiko!Takachiko!暖淡堂の方で、現代詩やエッセイを続けて公開しています。 dantandho21.blogspot.com その場で跳躍し続ける。そして、地面に降りるたびに別のものになっている。同じものの再現ではなく、n'であり、n''であり…

文章の見た目、言葉の詰まり具合が気になっていた頃

こんにちは、暖淡堂です。 Takachiko!Takachiko!暖淡堂の方で、現代詩やエッセイを続けて公開しています。 dantandho21.blogspot.com ちょっとした理由があって、岩成達也さんの詩を集中的に読んでいたことがあります。岩成さんが現代詩手帖の投稿欄の選者を…

頭の中でいつも誰かに対して話し続けている その声を聞いている誰かがいる

こんにちは、暖淡堂です。 Takachiko!Takachiko!暖淡堂の方で、現代詩やエッセイを続けて公開しています。 dantandho21.blogspot.com 太宰治の小説「思い出」の中に、頭の中で常に自分の行動に注釈をつけ続けているということが書かれていました。ふと、とか…

深海魚と輝く砂とのイメージの交差 

こんにちは、暖淡堂です。 Takachiko!Takachiko!暖淡堂の方で、現代詩やエッセイを続けて公開しています。 dantandho21.blogspot.com 深海魚とか、古代の魚とか、割と好きです。見た目がちょっと異様ですが、おまけに近くにいるとちょっと怖いと思うのですが…

そもそも性質の違うものを無理に貼り合わせているとそのうち剥がれてきてしまう

こんにちは、暖淡堂です。 Takachiko!Takachiko!暖淡堂の方で、現代詩やエッセイを続けて公開しています。 dantandho21.blogspot.com 同じものでも、一旦切り離してしまうと、もう元には戻せません。例えば一本の木も、薪のように小さく切り分けてしまったら…

田沢湖を訪れた時のことを思い出しながら もう紅葉の季節ですね

こんにちは、暖淡堂です。 Takachiko!Takachiko!暖淡堂の方で、現代詩やエッセイを続けて公開しています。 dantandho21.blogspot.com もう20年近く前になりますが、田沢湖の畔を路線バスで移動したことがあります。最終の目的地は、山の方に入ったところにあ…

雨の日に 見知らぬ土地を バスで移動したことを 思い出しながら

こんにちは、暖淡堂です。 Takachiko!Takachiko!暖淡堂の方で、現代詩やエッセイを続けて公開しています。 dantandho21.blogspot.com はじめて訪れる場所を、路線バスで移動するというのは、とても不安なものです。それが、雨の降る夜だったりするとなおさら…

駅に流れ込むもの 交差するもの

こんにちは、暖淡堂です。 Takachiko!Takachiko!暖淡堂の方で、現代詩やエッセイを続けて公開しています。 dantandho21.blogspot.com 今は在宅勤務の比率が高いので、週に一度程度しか電車を利用しませんが、コロナ前は毎日、満員電車で通勤していました。基…

同じ空間に過剰に存在するとどうなるのか 過飽和ということ

こんにちは、暖淡堂です。 Takachiko!Takachiko!暖淡堂の方で、現代詩やエッセイを続けて公開しています。 dantandho21.blogspot.com 砂糖や塩を水に溶かす時に、砂糖や塩の量を次第に増やしていくと、やがてどこかの時点でもうそれ以上は溶けなくなります。…

権勢の頂点から急にいなくなってしまった平家の存在意義

こんにちは、暖淡堂です。 Takachiko!Takachiko!暖淡堂の方で、現代詩やエッセイを続けて公開しています。 dantandho21.blogspot.com 平家物語は、僕の好きな本です。岩波文庫版の「平家物語」、何度も読んでいます。平安時代末期から鎌倉時代にかけて、最終…

硬い水面 押し返す液体のイメージ

こんにちは、暖淡堂です。 Takachiko!Takachiko!暖淡堂の方で、現代詩やエッセイを続けて公開しています。 dantandho21.blogspot.com またちょっと理系の言葉で書かせてください。 ダイラタンシーという現象があります。ゆっくりと力を加えるとダラーっとト…

駅舎 旅立つところ 帰り着くところ

こんにちは、暖淡堂です。 Takachiko!Takachiko!暖淡堂の方で、現代詩やエッセイを続けて公開しています。 dantandho21.blogspot.com 生まれ育ったところから遠く離れて暮らしています。 時々帰省しますが、すぐに今暮らしているところに戻ってきてしまいま…

ただすれ違っただけのものを 不意に思い出すのはどうしてなのか

こんにちは、暖淡堂です。 Takachiko!Takachiko!暖淡堂の方で、現代詩やエッセイを続けて公開しています。 dantandho21.blogspot.com 街中を歩いている時に、ただすれ違っただけのものや、意識もせずにただ視界に入っただけの出来事を、覚えていることってあ…

急ぐほど無駄が多くなりますね カルノーサイクルの効率のことなどを思い出します

こんにちは、暖淡堂です。 Takachiko!Takachiko!暖淡堂の方で、現代詩やエッセイを続けて公開しています。 dantandho21.blogspot.com 水の流れを利用する水車。 水が高いところから低いところへ流れ下る時のポテンシャルエネルギー変化を使うので、排ガスな…

光の粒が見える夜 月の美しい夜に

こんにちは、暖淡堂です。 Takachiko!Takachiko!暖淡堂の方で、現代詩を続けて公開しています。 dantandho21.blogspot.com 月が太陽よりも「美しい」と感じるのは、それをじっと見つめることができるからだと思います。 太陽だと、眼が焼けてしまいますね。…

埋もれている記憶は、身体のどこかで思い出されるのを待っている

こんにちは、暖淡堂です。 Takachiko!Takachiko!暖淡堂の方で、現代詩を続けて公開しています。 dantandho21.blogspot.com ある時から、記憶とは脳のどこかにあるのではない、と思うようになりました。 脳は、身体のどこかにある記憶を言葉にしているだけ。 …

どこを郷里と思えばいいのか、迷うときがやがて来る

こんにちは、暖淡堂です。 Takachiko!Takachiko!暖淡堂の方で、現代詩を続けて公開しています。 dantandho21.blogspot.com 祖母が亡くなった後、しばらくは実家は自分の帰るところではないような感じがしていました。 家の中の大切なものが欠けてしまって、…

身体の肌と 大地の表面との ザラリとした接触 底にあるものの類似を表現する試み

こんにちは、暖淡堂です。 Takachiko!Takachiko!暖淡堂の方で、現代詩を続けて公開しています。 dantandho21.blogspot.com 人間の身体の中にあるものは、どれもとても柔らかくて、それを骨格と皮膚で覆うことで形を維持しています。 それは、地表の下にある…

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