安心感の研究 by 暖淡堂

穏やかに日々を送るための試みの記録

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現代詩

【現代詩】「緩やかにずれる」 すれ違う異国の匂いのイメージ 現代詩の試み

緩やかにずれる 夏の夜 しつこく続く歯茎の痛みが 「私」の中の何かをざわつかせ それに激しく促されて 不意に 前のめりになりながら 遥かな涯の叫び声を聞きながら 「私」と「身体」が 緩やかにずれる 痛みとともに 置き去りにされたのは 「私」、の方だっ…

【現代詩】「ベンチ」 すれ違う異国の匂いのイメージ 現代詩の試み

ベンチ 目の前をたくさんの人たちが通り過ぎていく僕はベンチに腰をおろしたままそれをただ見ている少しだけ目を閉じてみる異国の言葉が周囲を埋めていたことに気づくそしてここが僕のあの国につながっていることにもきっと、あの部屋で僕の家族も目を閉じて…

【現代詩】「風と雪」 季節の間に雑に積もるものたちのイメージ 現代詩の試み

風と雪 足元を駆け抜ける子犬を追って ただズルいだけの気配が 落ち葉をめくる その冷たさがとても雑だ 匂いだけで降っていた雲のカケラが 首筋を撫でながら なぜか笑う 透き通ったアマい声で 季節の変わり目に 騙されるとしたら 重さのないものだけが この…

【現代詩】「鞄」 手放せたもののイメージ 現代詩の試み

鞄 不意に 足が重くなり 乗り込むつもりの 電車に乗り遅れてしまう プラットフォームで 次の電車を待っていると もう電車は来ないとアナウンスがある あきらめて 立ち去ろうとすると 僕の鞄を持った男が 急ぎ足で階段を上っている 声をかけようとしたが なぜ…

【現代詩】「雪の処方箋」 暗い空から剥がれ落ちる白い雪のかけらのイメージ 現代詩の試み

雪の処方箋 雪を処方 いたしましょう 雲から剥がれた 淡雪を 月のきれいな 静かな夜に 一粒目尻に 置くのです その冷たさが 盛り上がり 温もりになって 流れたら 明日の朝に 目覚めるための 静かな夢を 見てるでしょう ***** 今回の詩は、以下の詩集の…

【現代詩】「街の表皮」 層状の風景と層間を満たす液状の現実のイメージ 現代詩の試み

街の表皮 机の表面の奇妙な凹凸を指でなぞると プクリ、と水泡状に膨らみ 指で押されて、 移動する それをさらに押し続け 机の端まで追い込んだ後 そのまま床に落とす と、それはゼリー状の塊になって 床でペチャリと音を立てる 私はもう、浮遊する眼球にな…

【現代詩】「駅までのわずかな距離を…」 鉄道という消化器のイメージ 現代詩の試み

駅までのわずかな距離を… 駅までのわずかな距離を 歩ききることができない朝 僕を押しのけ 追い越していった人たちの顔が 今、僕を置き去りにした電車の窓を 稠密に埋めている 埃っぽい灰色の街に立ち尽くす僕は もし僕のこの身体を動かしてくれるのであれば…

【現代詩】「駅 は …」 鉄道という消化器のイメージ 現代詩の試み

駅 は … 駅は 日々たくさんの人を飲み込み 吐き出している 巨大な循環器の出入り口だ 人々は 手にした重い鞄に詰め込んだ 豊富な栄養を 時には致命的な毒素を 線路に沿って持ち運ぶ 血球のようだ 若く 力に満ちた人々が集まる駅は 騒々しく 栄養が溢れ いつ…

【現代詩】「沙汰無し」 終わるものと始まるものの温度差のイメージ 現代詩の試み

沙汰無し 駆け回って何も得られない日々が続き 君は元気ですか僕は立ち止まります 夏はもう盛りを過ぎました もうこんなに静かです 僕もしばらく言葉を節約します 力を溜めるため ***** 文学が好きな方なら、以下の詩集はおすすめです。 働きながら、詩…

【現代詩】「そして、舞う雪…」 北の涯の凍りついたような砂浜と雪のイメージ 現代詩の試み

そして、舞う雪… (…底で騒ぐ突起の群… (…その、一塊が… (…不意に、沸騰する… (…そして、崩れた底のさらに下に… (…新たな「底」がのぞく… 浮上する泡は 表面が突起で覆われた 「まるで袋」のように 膨張を続けるのだ 打ち上げられるのは 北の、遠い涯の …

【現代詩】「根」 遠い北の駅の待合室と、線路の上を季節の変わり目に吹き抜ける風のイメージ 現代詩の試み

根 冷たい風の吹く朝 遠い北の町を目指して 細い指で地層の境目に指を差し込む 狭い穴の中が 生ぬるい呼気で湿り 汗が土を固め 指先を押し返す 呻く口に、ざりざりとした土が入り 吐き出そうとして 最後の息を吐いてしまう 重い、窒息 と、爪が剥がれ 温かな…

【現代詩】「花」 酔った花が光のようにこぼれ落ちるイメージ 現代詩の試み

花 酒気まじりの風が その枝の先で微かな渦を巻く、 と、 空間が小さく揺れ、 波紋のように生じた襞の間を、 滑り落ちるように、 たくさんの花が、 一斉に… 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazo…

【現代詩】「白き峰」 人間の弱さを知らせるもののイメージ 現代詩の試み

白き峰 駐車場の手摺越しに 白き峰々が、見える 人々の暮らしを 不意に呑み込む 大量の雪を被り 一層聳え立つ 大きな 白き峰々が、見える 冷たい風の午後 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon …

【現代詩】「秋の駅/豊沼」 渦を巻く季節の中心にある故郷のイメージ 現代詩の試み

秋の駅/豊沼 空間を埋めるいくつもの勾配から そのざわめきから 瞬間に凝り、ゆっくりと とてもゆっくりと 滑り落ちる小さな無数の滴の群を その静かな流れを 層流状態に落とし込むのは 冷ややかな激しさ 滴は加速する螺旋を描きながら寄り集まり 青い球状…

【現代詩】「変 域」 境界線上を滑落しながら発熱する液滴のイメージ 現代詩の試み

変 域 その白い膚に凝るように寄り集まる滴は 互いの境界を食い破りながら成長し 表面を泡立てながら発熱する 越境する水銀球になる それ、 は、 ゆっくり、 と、滑落しはじめる… 水銀球は 産毛の上を転がりながら 急激に発熱し不意に泡立つ転移点に到る 乱…

【現代詩】「毘売塚(ひめづか)」 冷たい水の底に横たわる古代の丸木舟と月のイメージ 現代詩の試み

毘売塚ひめづか 紺色の雲の端が朱色に炙られ 渦巻き身を捩る 遠い涯から冷たい風が (…不穏な… (…底の、獣を目覚めさせる… 空から剥がれ落ちた風が 砂浜を舐め続ける薄い波の舌先を 白く、まだ幼い足で踏みしめながら 水平線の先を睨み続ける少年は (…落ち…

【現代詩】「地下茎」 深い地底で醗酵する古代の遺物のイメージ 現代詩の試み

地下茎 ここ、に この地下に溜まる 巨大な爆縮が持ち去った 触手の時代の空洞 あるいははじめからなかったもの 後退する凍土が置き去りにした湿地 涯からの響きに応えるのはこの地下に並ぶ灰色に膨れ上がる腹を抱えた箱舟の群暗い窓に浮かぶ口不ぞろいな歯に…

【現代詩】「未明/境界」 長い航海の終わりに、境界にたどり着くもののイメージ 現代詩の試み

未明/境界 (…霧が、揺れ… 過飽和の空間から 凝り落ちるように 帆船が 帆の破れた 帆船が 何隻も 現れ (…風が、止み… 岩を舐めていた 薄い波が静かに逃げ 置き去りにされた 岩の上に 帆船が 座礁する 海岸を帆船が埋める 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖…

【現代詩】「錘」 力を抜くことで得られるものの一つのイメージ 現代詩の試み

錘 横になり目を閉じると いろいろな音がここをつつんで 底を流れるやわらかな水に気付く 夜の錘 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon 【現代詩】「錘」 力を抜くことで得られるものの 一つの…

【現代詩】「未明/境界」 繰り返し境界で座礁するものたちのイメージ 現代詩の試み

未明/境界 (…霧が、揺れ… 過飽和の空間から 凝り落ちるように 帆船が 帆の破れた 帆船が 何隻も 現れ (…風が、止み… 岩を舐めていた 薄い波が静かに逃げ 置き去りにされた 岩の上に 帆船が 座礁する 海岸を帆船が埋める 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖…

【現代詩】「坑 道」 燃え上がるボタ山のイメージ 現代詩の試み

坑 道 餓えた男達は、黒く硬い層を噛み砕き、食らいながら掘り進む。 もう何年も眠らずに掘り続けたが、満たされることはなく、不意に襲いかかる「希薄さ」に、頼りなく窒息してしまう。 (…とろりとした脂に満ちた坑道と… (…巨大なボタ山をいくつも残し… …

【現代詩】「白 妙」 季節の変わり目の、高い空の襞のイメージ 現代詩の試み

白 妙 山頂で、粉雪が 風に、なびいている 真っ青な山に映え かつて舞い降りた 若い女が 帰っていくようだ 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon 【現代詩】「白 妙」 季節の変わり目の、高い空…

【現代詩】「駅までのわずかな距離を…」 身体における心の遅延のイメージ 現代詩の試み

駅までのわずかな距離を… 駅までのわずかな距離を 歩ききることができない朝 僕を押しのけ 追い越していった人たちの顔が 今、僕を置き去りにした電車の窓を 稠密に埋めている 埃っぽい灰色の街に立ち尽くす僕は もし僕のこの身体を動かしてくれるのであれば…

【現代詩】「坑 道」 熱い地下に眠り続ける人たちのイメージ 現代詩の試み

坑 道 餓えた男達は、黒く硬い層を噛み砕き、食らいながら掘り進む。 もう何年も眠らずに掘り続けたが、満たされることはなく、不意に襲いかかる「希薄さ」に、頼りなく窒息してしまう。 (…とろりとした脂に満ちた坑道と… (…巨大なボタ山をいくつも残し… …

【現代詩】「季 節」 あの土地の、季節の匂いのイメージ 現代詩の試み

季 節 歩き、うろつき続けているといつの間にか、季節を追い越してしまうことがある僕の後を、涼しい風が追ってきていたふと足を止めた僕を追い越していったそれは、去年の秋の、においがした 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂…

【現代詩】「推 進 機」 噛み合わない歯車が発熱し続けるイメージ 現代詩の試み

推 進 機 機能が麻痺した夜 意図が熱を吐き始めたので底に沈めた 緩やかに忍び込み 不意に襲う激しい痛み 引き起こされる動揺と滑落 ほんの少し引き剥がされる残像と ここ、だと思っている痩せた身体との わずかの隙間に影に似た粘る液体が流れ込み 逆らいよ…

【現代詩】「溶け残る街」 溶けて大地に浸み込んだものだけでできた夜の街のイメージ 現代詩の試み

溶け残る街 (…足元の影が薄くずれる… (…きっと… (…ずっと 前に… (…「私」達は始めていた… 空間を切り分ける目盛りが わずかの気配に震え 濁りのない雨が凝り落ち (…膨張し… 地面を転がり 「底」からの微かな音に揺れる 臆病な「私」達を温かく濡らし窒…

【現代詩】「接 触」 空隙を埋め続ける時間のイメージ 現代詩の試み

接 触 ああ夕焼だここで立ち止まろう そうしたら 置き去りにして来たものが追いつくだろう たくさんのものが 赤い夕陽と一緒にここを満たすだろう 溢れさせるだろうその一瞬前に足を踏み出さなければ… 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 …

【現代詩】「夜 見 島」 砂州の先にある暗い島のイメージ 現代詩の試み

夜 見 島 予感(…ぎっしりと詰まった白色の空間搾り出されるいくつもの黄色い目砂を重く詰め裏返し熱く濡れた冷たい夜 振動する石英の微粒子 降りはじめる雨 秋の日の 砂浜の 穴 衣服から滑り水に落ち溶ける救いのない獣の動き黒くぬるい底流された服に手が…

【現代詩】「暖かく、湿った部屋」 時間の渦、声だけが潜む部屋のイメージ 現代詩の試み

暖かく、湿った部屋 いつも誰かが起きている暗い部屋でじっと耳をすましているそして時々、泣いているもう眠ってもいいよこの暗がりは埋めるから 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon 【現代詩…

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