安心感の研究 by 暖淡堂

穏やかに日々を送るための試みの記録

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現代詩

【現代詩】「雨の音」 時間を滑り落ちるイメージ 現代詩の試み

雨の音 眠りの底に微かな雨の音を聞いていたそれは、故郷の家のトタン屋根を叩く雨の音だったふと目を覚まし“ここ”に滑り落ちたまだ暗い朝に“ここ”でも雨が降っていた数十年をはさんでなんという偶然だろうまた、僕は… ***** 朝、目が覚めた時に聞く、…

【現代詩】「雨のち晴れ」 乾いた日々のイメージ 現代詩の試み

雨のち晴れ 雨、が降っていた 暖かな朝だった 妻と娘に見送られて 家を出た車から たくさんの水滴が落ちた まだ暗い道を 白いライトで擦りながら走る 濡れた猫の死骸がまだある ライトの破片が散らばっている 打ち合わせを終え 蒸し暑い電車の中で過ごしてい…

【現代詩】「西へ」 彷徨い続けるイメージ 現代詩の試み

西へ あの街は 雪が降り積もると 冬は暖かかった それがわかったのは 冷たい風だけの 冬を何度も過ごしたから 一人きりでは 耐えられなかったかもしれない 立ち続けることも できなかったかもしれない 僕は家族に 仲間に 支えられながら 自分で立ち歩き続け…

【現代詩】「そこにいる」 滑らかにズレる時のイメージ 現代詩の試み

そこにいる ふと、青空を見上げたとき暖かい風に吹かれたとき夏の海の匂いを嗅いだとき妻の肩が僕の肩に触れたとき娘が胸の中に飛び込んできたとき僕の中から、何かがすっと滑り落ち子供の頃空を見上げていたあの田んぼの畦道に流れ込む自分はどこにいくのだ…

【現代詩】「行かない」 そっと離れている 現代詩の試み

行かない 人の集まるところには行かない友だちの集まっているところには行きたくない懐かしい人たちには会いたくないただ、あの風景には無性に会いたくなるあの日の風に、また吹かれたくなるあの夜聴いた歌に、また揺さぶられたくなるだけど、僕は〝ここ〟に…

【現代詩】「追いつく、風」 あの日と同じ青空 現代詩の試み

追いつく、風 青い空を見上げてふと子供の頃同じような青い空を見上げながら思っていたことが〝ここ〟に追いついた時背中から手の先、足の先に向かって冷たい流れが走り胸の〝底〟でその源がゆったりと揺れるあの日の僕はここまで来たんだ…そう思うと青い空…

【現代詩】「オモチャ屋さん」 消費の場としての玩具屋のイメージ 現代詩の試み

オモチャ屋さん 騒音の中で子供たちが遊んでいる疲れた顔をしてなにかが吸い取られているようだ ***** ついつい余計なことを言ってしまうことがあります。 そろそろこの辺りを矯正しないと、ただの老害発生源になってしまいそうです。 この詩も、そんな…

【現代詩】「脆いものの底に」 時の流れのイメージ 現代詩の試み

脆いものの底に 流行するとは やがて廃れるということだ 先頭に立つということは やがて追い抜かれるということだ 目立ってしまうと 皆にいじられ汚れていく 千年、二千年、三千年の時間に洗われ 角が取れ、鈍く光る 触れると冷たいが 次第にさわやかな風を…

【現代詩】「暮らす」 鞄の重い朝 現代詩の試み

暮らす 家を出るときに 鞄の重たすぎる日がある それでも家を出ると 冷たい雨が降っていることがある 人に会う前に すでに色々と僕を押し戻すものがたくさんある そんな時 少し先にいる僕に引っ張ってもらう それは数年先の自分かもしれない そこにいる僕は …

【現代詩】「放射光」 理性を曲げるもののイメージ 現代詩の試み

放射光 高速の 無言の 粒子の群が 強力な磁場で 曲げられる時 ささやき交わす (…、ああ、ああ、〝私〟は… 層状に重なる声は 青白い放射光となり 巨大な輪の中心にそびえる 鳥居を 浮かび上がらせる ***** 宇宙のどこか遠い涯から飛んでくる無数の粒子を…

【現代詩】「午後、駅で」 待ち続けてくれているもののイメージ 現代詩の試み

午後、駅で 駅のプラットフォームの 古い木製のベンチに おばあさんが座っていた 僕の乗る電車が プラットフォームを離れるとき おばあさんはのんびりと おにぎりを食べていた 電車の窓を 早春の陽射しが 暖めていた ***** さだまさしさんの作品に「空…

【現代詩】「ここ」 言葉は表と裏が同時に生まれるイメージ 現代詩の試み

ここ 不意に目があう と、ここに 搾り落とされる 不定形の 滴 言葉に身を隠す前の ***** 言葉は、相手に向かって発せられると同時に、自分自身に向かっても語りかけます。 今、自分が言いたかったのは、このようなことなのか。 相手に伝えたかったのは…

【現代詩】「ともだち」 胸の奥の冷たいしずく 現代詩の試み

ともだち 今日娘のともだちが引っ越していく 娘はいつものように一緒に遊んでいる そして、そのまま別れるようだ この日が、胸の中の冷たいしずくになっていることに気がつくのはいつのことだろうか その日も空が晴れていてくれたらいい ***** 娘がまだ…

【現代詩】「春の日差し」 そんな宣言 現代詩の試み

春の日差し 暖かな日差し微かな風 やわらかな笑声甘い匂い 春は確かに 近くに来ている どこかに引っ掛かっている冬の裾を 明日の朝 外してあげよう ***** 過去のデータを見ると、僕は毎朝、詩を書いていたようです。 これも2008年の作品。 気持ちに波が…

【現代詩】「スタートしない」 そんな宣言 現代詩の試み

スタートしない まだスタートしない 今年はゆっくりと 今夜はたくさん寝るんだ ビールを少し多めに飲んで ***** これも2008年のお正月休み期間中に書いています。 思えば、これまでの会社員生活の中で、トップクラスに忙しい時期だったと思います。 力…

【現代詩】「石の川原」 ”ここ”を過ぎ去ったもののイメージ 現代詩の試み

石の川原 国道沿いの無人駅に降り立つ 切符を改札口の金属製の箱に入れ 何かに呼び止められるように何度も振り返りながら 国道を渡る その先に、ゆったりと川が流れている ごつごつした石を踏みながら水に近寄ると やはり何かに呼び止められるような気がする…

【現代詩】「速度差」 遅れることで実現されるズレを生きる 現代詩の試み

速度差 〝私〟は 希薄な流体の速度差が生み出す 濃淡の、層状の、互いに混じり合わない 白い空間に置き去りにされる 柔らかな身体と、硬い嘴をもつ 雛の群の中に放り出されたように 〝私〟の身体は 心地よさと痛みとを同時に感じる それは不意に熱く、不意に…

【現代詩】「晴れ」 家族がいるからこそ 現代詩の試み

晴れ 今朝は晴れ 山にかかる雲の端が 赤く染まっている 雲の切れ間にのぞく空が 青白く光っている 立ち止まれば 妻が背中を支えてくれる 娘が手を握ってくれる 生きていくのに さらに何が必要だというのか 今朝は晴れ もう一度夢を見よう もう一度、夢を見よ…

【現代詩】「元日」 あの街に降る雪 現代詩の試み

元日 神社に行った家族でお参りした家から半径五十メートルをこえなかった 今年はできれば自分の足で行ける範囲で生きたい そんなことを思ったりした 雪が降っていた静かな一日だった ***** これも2008年の元日に書いた詩です。 自宅のすぐ裏手に神社が…

【現代詩】「今年の雪」 あの街に降る雪 現代詩の試み

今年の雪 色々な街で 降る雪を眺めた 冷たくもあり、暖かくもあり ひたすらに白く、また暗い影を孕み あるいは、零下の夜気を吸い、青く光り 今年は 軽やかに舞う雪になった この 西の街で ***** 2008年の元日に書いた詩です。 当時は山口県に住んでい…

【現代詩】「走り去るもの」 雪の夜に 現代詩の試み

走り去るもの 電車の音が近づき、離れていく 雪混じりの風が窓硝子を叩く 日々が去り日々が訪れる ここ、にいるはずの僕が一番初めに 走り去る あの雪山の細い枝は きっと風に鳴っている ***** 子供達が、夕暮れ時に、外で遊んでいる。 その声を聞きな…

【現代詩】「また、一歩」 戸惑いと決意の間 現代詩の試み

また、一歩 僕は、ついさっき考えていたことの上に立っているさっき、していたことの上に立っているさっきまであったものはすべて、僕の足の下にあるのだそして、僕の前には真っ暗な、底の見えない闇があるだけどこに向かって足を進めたらいいのかまるでわか…

【現代詩】「駆け出す」 衝動と時間 現代詩の試み

駆け出す 不意に、駆け出すには ちょうどよい季節になった かもしかや若い鹿のようには もう駆けられないけど むしろよたよたと だらしがないくらいだけれど 不意に駆け出すには ちょうど、よい季節になった 雨空を見上げ、吐息をつき 駆け出すには ****…

【現代詩】「それは華だろうか」 部屋の隅で囁くもの 現代詩の試み

それは華だろうか 足元に散り積もった 色とりどりの 僕の傍にいつもある ノスタルジーの塊を チクチクと刺激する 落ち着かなくさせる そしてあの部屋の隅に 引き込んでしまう それは華だろうか 季節の変わり目の 雨を呼ぶだけの 雨を呼ぶだけの… ***** …

【現代詩】「華下」 来し方行く先の中間で佇む 現代詩の試み

華下 梅が咲き、桃が咲き 車窓の景色 曇天の暗い街に 色を散らし 丸い花びら とがった花びら いずれも 雨に打たれ ふと、風に舞う 儚い色の花びらを 無数の花びらを 思う 後、何度 見られるだろうかと そんな風に思う ***** 春に咲く花を見るたびに、来…

【現代詩】「…しずかな…」 雪を聴く 現代詩の試み

…しずかな… あさが しずかになり… (…おとが、とおくなり… あめ、みぞれ、そして ああ、 ゆきだ… ***** これも2007年の12月に書いた詩です。 寒い冬だったようですね。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 …

【現代詩】「殻」 ここ、ではない場所へ 現代詩の試み

殻 硬い殻から冷たい雨の中に連れ出され置き去りにされた犬よりも悲しい目をしているのではないか雨雲を見上げることが出来ないそれすら僕の目には眩し過ぎるのだあの硬い殻はもうすぐ飛び立ってしまう ***** 2007年の12月に書いた詩です。 それが曇り…

【現代詩】「また、雪」 同じことを話し続けられる幸福 現代詩の試み

また、雪 日々は一日ずつ過ぎているのに 二四時間きちんとかかっているはずなのに 帰宅する電車の中では なんて長い一日だったのかと思ってもいるのに 一月はあっという間に過ぎてしまい 一年も、気がついたら また同じ季節になっていて 妻と靴底の話をして…

【現代詩】「代 償」 対立の涯の砂漠のイメージ 現代詩の試み

代 償 テレビでは 相変わらず 誰かの子分になりたい人たちが 自分の子分を引き連れて歩いている まるでパレードのような姿が 映し出されている 我々はただ、微かな空腹感を堪えながら ぼんやりと眺めているだけだ そして、そんな行為の代償を 気づかずに負わ…

【現代詩】「港と駅のある街で 4」 吹雪の最中に聞こえる泣き声のこと 現代詩の試み

港と駅のある街で 四 雪が重く練りこまれた空間の底を揺するように 遠い汽笛が微かに響く 不意の風が 雪の落下する軌跡を崩す 灯りを消した駅の隅の暗がりで 何かが泣き続けている また、汽笛が聞こえる と、暗がりで立ち上がるのは 小さな子供だ そして 雪…

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