毘売塚
紺色の雲の端が朱色に炙られ
渦巻き身を捩る
遠い涯から冷たい風が
(…不穏な…
(…底の、獣を目覚めさせる…
空から剥がれ落ちた風が
砂浜を舐め続ける薄い波の舌先を
白く、まだ幼い足で踏みしめながら
水平線の先を睨み続ける少年は
(…落ち着かない…
(…獣が、底で、臭う息を吐く…
血で泥濘る砂浜に
赤黒く染まる矛を立て
細い腕で、震える指先で、穴を掘る
緑の光を滴らせる月の下
布で固く包んだ少女を
穴の底の丸木舟にそっと横たえる、と
静かに砂が、黄色い風が、穴に流れ込み
(…ああ、…
(…そこに、「私」も、…
不意の衝動に、息を吸うこともなく
///叫ぶ///骨が、軋む///
(…少女が、目を開く…
暗い沖で、金色の水が吹き上がり
その先が月に届くと
血を流し倒れていた無数の骸、の、影が、
ゆらゆらと揺れる影が、立ち
穴の縁に蹲る少年の周りを
少女を埋めた塚の周りを
回り始める
やがて月が沈み、影が消え
小さな足跡が
(…溶け、消える…
【現代詩】「地下茎」
深い地底で醗酵する古代の遺物のイメージ
現代詩の試み
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