安心感の研究 by 暖淡堂

穏やかに日々を送るための試みの記録

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【現代詩】「砂/すな」 ここ、ではない、遠い場所への視線 現代詩の試み

 

砂/すな

  

 

まわり

時に 落ち

休日の午後 冷たく 影 流れ込んで

春は まだ 土の下にも きていない

期待などしない 鴉だけが

その鳴き声に

時の 細い糸

祈る 木々の先

巻き込まれるのを 匂わせて

 

しかし 遠く しかし 古く

なにを 思い浮かべる

ふるかえる 子供

その目 その涙

どこへ落ちる

砂… 砂…

湿った 重たい砂

冷たい 夏 しか こない

どこか 遠い 北の砂浜

 

白い鳥の足を さらい

埋めてしまう 重い波

その 遠い 砂浜に

捨てた なにか

…重いもの、すべて…

 

病のようなもの

…それはあたたかいもの、しかし、苦しい、辛い、切ない、暗い窓、の光に浮かぶ…

 

振り返る 暗い 顔

その目、その、重く砂を詰めた 黒い目で

振り返るのは

あの 冬の日の いつまでも 打ち続ける

冷たい 風に巻き込まれた 

凍り

手指を切るほどに鋭く

…そこ、に、あった…

 

どこまで 遡れば

この胸が こんなにも 重く 埋められてしまう あの 砂は どこに

あの 日の あの 黄色の 長靴は

(…あった…

(…そんなもの、なかった…

 

落ち着いて

ひとり たどりつけるのか

(…そこに、あった…

振り返る 顔

 

祖母の 顔

その夜 そこにいた 亡くなった

しかし それは ひとつ

なくなった

 

あるのか

指の先に 重く ひっかかり

いつも 邪魔をして 犬のように

いらいらと 足のあいだに まとわりつき

 

(…どこへ、いくというのだ…

 

遅い 冬の 夕暮れ時

寒さが 部屋のすみに溜まり

音 ピアノの音が 空間から しぼりだされている

どこかで なにかが 動く音

どこかで 黒点のような 鴉の

犬の 鳴く声

どこか

 

(…それを、どこへ、置けばいい

 

(…どこへ、

 

(…(…もう、いいだろう  

 

 

  

*****

 

様々な「故郷への想い」が、ずっと渦巻いています。

特に、年老いた両親を見た後は、際限なく繰り返されるようになっていて。

 

 

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dantandho

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