こんにちは、暖淡堂です。
極私的京極祭、まだ続いています。
今回読んだのは「今昔続百鬼 雲」。
「多々良先生行状記」という副題つき。
「百器徒然袋 雨」は2001年11月5日に第一刷発行です。
ついに21世紀に入りました。
この本に収められた作品群の主人公は「多々良勝五郎」。
京極作品を愛読されている方はすぐに思い出すかもしれません。
あの京極堂中禅寺秋彦と対等に「妖怪」について話ができる人物です。
「塗仏の宴」に登場していますね。
その姿は「菊池寛の天地を詰めたような」と描かれています。
まあ恰幅のよい姿くらいで想像しておくのがよいかと。
この多々良勝五郎センセイ、友人または知り合い、あるいは助手の沼上氏と、日本各地を訪れては事件に巻き込まれます。
そして、その妖怪に関する無駄なまでに豊富な知識で事件を掻き回し、挙句にはなんらかの解決にまで導いてしまいます。
その現地の関係者たちとのやりとりがとても面白い。
ここまで話が食い違うと、それはそれである意味探偵行為と同じになってしまうようで。
この本に収められている最後の作品は、この後に発表される「陰摩羅鬼の瑕」に繋がります。
この事件で、多々良勝五郎センセイと京極堂中禅寺秋彦は初対面することに。
「調べていたって、あなた何者ですか」
先生が相変わらずの突慳貪な調子で尋いた。
「ああ、前にも云いましたが本屋です。中野で古書肆を営んでおりますー中禅寺と云います」
「中禅寺さんーでもあなたあの時」
ー憑物落としの拝み屋ですよ。
慥かそう名乗ったのだ。あれは副業ですと中禅寺は云った。
なお、この作品に登場する伊庭刑事は、続く「陰摩羅鬼の瑕」では重要なキャラクターとして登場します。