安心感の研究 by 暖淡堂

穏やかに日々を送るための試みの記録

*本ブログにはスポンサーによる広告が表示されています

【現代詩】「街の表皮」 層状の風景と層間を満たす液状の現実のイメージ 現代詩の試み

 

街の表皮

  

机の表面の奇妙な凹凸を指でなぞると

プクリ、と水泡状に膨らみ

指で押されて、

移動する

 

それをさらに押し続け

机の端まで追い込んだ後

そのまま床に落とす

 

と、それはゼリー状の塊になって

床でペチャリと音を立てる

私はもう、浮遊する眼球になっている

そして、そのゼリー状の塊が

床から壁を伝い

窓枠の隙間を通り抜けて

街の中に逃げていくのを

追い続けた

 

街の通りは、いつも

ヌルイ食用油の匂と

皮膚病の犬の獣臭さと

狂った女の悲鳴のような色でできた

タール状の表皮を被っている

 

道路と並行して地下を走るトンネルを

目の溶け落ちた

灰色の肌の男たちが

獣のように這い回っている

信号は、その男たちのためにあることを

知っているものは誰もいない

地上にはいない

 

灰色の男たちは

骨の折れた指と

歯の抜け落ちた口で

地表に向かって地面を崩し続けているのだ

信号が時折明滅する意味を

足元が

不意に揺れる

その意味を

私の眼球は孕むのだ

 

私の指先から落ちた

ゼリー状の塊は

恥ずかしく光る痕跡を残しながら

街の入り口で

埃まみれに転げまわり

乾いていくのだ

そして、また

この街の表皮に薄く重なる

 

と、地面の一部が小さく陥没し

徘徊する犬が足を止める

その小さな穴から

臭気が漏れ

灰色の

手が突き出される

いつもの朝  

  

*****

 

以下は僕の好きな詩集です。

一番近い本棚に入っています。

 

 

 

以下は暖淡堂の詩集です。

  

 

f:id:dantandho:20210924172547j:plain

dantandho

にほんブログ村 ポエムブログ 現代詩へ
にほんブログ村

 

PVアクセスランキング にほんブログ村

PVアクセスランキング にほんブログ村