安心感の研究 by 暖淡堂

穏やかに日々を送るための試みの記録

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【現代詩】「響 砂 島」 古代の魚と石英の砂の海のイメージ 現代詩の試み

響 砂 島

 

 

遠く とおく

きぃん きぃん と響く

静かな寝息をたてる 幻の白い女に似た

生まれたばかりの 光る深海魚

 

月からこぼれる光る砂に 赤犬は肩まで埋まって 頭に降りかかる砂を 耐えている

 

赤犬は 生まれる前の

意識がまだ 器官をかたちづくることを知らない 吃り

 

怯える目の先に なにかある 

 

破断面の拡がる波の下で

無数の古代魚が ざわざわとしぶきをあげる

 

くる

赤犬は 振り返る

 

そこに 

 

軋みながら 砂浜に乗り上げようともがく

黒い 巨大な 魚

果たされない 海の意図

叫びとともに 巨大な魚の影は 砂浜に沈む

裂け目の下の 古代魚が ゆっくりと口を開ける

崩れはじめた死体を脱ぎ捨て 

 

それは 

 

立ち上がる

腕でもなく 頭でもない 柔らかで 崩れながら したたる 

のびる 死体から 抜け出たもの

 

それを

 

腕として 頭として 愛すべき唇として

切り取るのは 青い月 の光

いや

 

それは 

 

愛に満ちた 父 母 の 目

 

砂浜を 冷たい響きとともに縦断する裂け目は

赤犬を飲み込み そして 

ずっと遠くで 

吐き戻した

 

 

 

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【現代詩】「響 砂 島」

古代の魚と石英の砂の海のイメージ 

現代詩の試み

 

またお立ち寄りください。

どうぞご贔屓に。

 

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