響 砂 島
遠く とおく
きぃん きぃん と響く
静かな寝息をたてる 幻の白い女に似た
生まれたばかりの 光る深海魚
月からこぼれる光る砂に 赤犬は肩まで埋まって 頭に降りかかる砂を 耐えている
赤犬は 生まれる前の
意識がまだ 器官をかたちづくることを知らない 吃り
怯える目の先に なにかある
破断面の拡がる波の下で
無数の古代魚が ざわざわとしぶきをあげる
くる
赤犬は 振り返る
そこに
軋みながら 砂浜に乗り上げようともがく
黒い 巨大な 魚
果たされない 海の意図
叫びとともに 巨大な魚の影は 砂浜に沈む
裂け目の下の 古代魚が ゆっくりと口を開ける
崩れはじめた死体を脱ぎ捨て
それは
立ち上がる
腕でもなく 頭でもない 柔らかで 崩れながら したたる
のびる 死体から 抜け出たもの
それを
腕として 頭として 愛すべき唇として
切り取るのは 青い月 の光
いや
それは
愛に満ちた 父 母 の 目
砂浜を 冷たい響きとともに縦断する裂け目は
赤犬を飲み込み そして
ずっと遠くで
吐き戻した
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