砂川―砂丘
視野の暗いはずれざわざわと音深く落ち
ちりちりと動くもの
目を凝らす ぼやける
読める 溶ける
と
予感が鳴り
滑りしめつけて
(…誰か)
言葉が滑り込んで
…いた…
音重なり少し遅れて聞こえる
同じように動いている身体
すぐ近く
置き去りにした船
暗く縁にたまる
視野の端に黒い染み
砂に首まで埋り怯えた目で振り返る赤犬
揺れる石
いくつもの透明な層の向こう
空洞の目が砂を詰めた目が虫に喰われた目が
(…視野の縁にあるのは目なのか)
(…誰か)
闇を埋める黄色い目
雪原
暗く影だけの拡がり差し出した手で感じる
舌先に冷たい鉄の味 (…違う)
それを探す (…誰か)
秋晴れの 吹雪の 雨に濡れた 暗い松林を
(…思い出すのが嫌だなぜ思い出す)
取り違える記憶
(…そんなところにいない)
ヨードの匂い
その日祖母の死んだ日逃げるように畳の上を這う雲の影をどうして目で追うことができるのだ(…誰か)
…ここ に
…ここ に
(…なにを見ているこんなものなくていい)
…ここ に 首の裏冷たく滑り落ち腹の上たまり膝の裏飛び上がろうと不意に身構え指は背中背骨の節なぞり硬い皮袋の黒い獣身をよじり駆け抜けた空洞冷たい水流れ ても
(…なにもないのだ)
(…脱ぎ捨てた船を砂丘に埋めたあの目をもう思い出すな )
…ここ、に (…誰か…誰か)
…こんな、ところに
…砂川―砂丘…
【現代詩】「雪 籠」
軽やかに舞う雪と異国の怪のイメージ
現代詩の試み
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