中原までを領土に加えた金国。
遼と宋の敗退により一気に支配領域が広がったが、その内政は落ち着かず、朝廷内では早くも権力争いが起きていた。
阿骨打(あぐだ)と楊令との間で語られた理想の国家の姿は現実のものとなるのか。
金国内の権力争い
阿骨打亡き後は、弟の呉乞買(うきまい)が王位を継承していた。
呉乞買は阿骨打の息子らが成長するまでの繋ぎとして王位についたが、やがて自分の息子を皇太子につけたいという希望を持つようになる。
その結果、阿骨打の息子を正統とする派と呉乞買の息子を皇太子に推そうとする派の対立が発生する。
対抗する派閥の勢いを抑えるために、金の中原における傀儡国家として建国される斉での主導権争いが静かに進行する。
西遼の建国と権力基盤
遼が金に敗れた際に、自らの手勢を率いて西に走った耶律大石はウイグルを中心とした地域に、広大な領土を持つ西遼を建国し、初代皇帝となる。
ウイグルは天山山脈の南と北にそれぞれ伸びている交易路、天山南路と天山北路を維持し、その利用料を商人から徴収し国の財源とする。
それにより、国民の税は一割という低いものであった。
この一割の税というのは、楊令が梁山泊の住民に課している税と同額。
交易の力を理解した梁山泊と西遼は、ゆるやかに連携を始めた。
交易の道は、東は日本、西は天山山脈の連なる先まで、遥かな距離を結ぶことになった。
秦檜の帰還
宋の帝とともに金により北へ連れ去られていた文官の秦檜が南宋に帰還する。
秦檜は、もとは抗戦派であったが、金国内で過ごす間に和親派となった。
金側としては、秦檜が南宋で影響力を持ち、中国を金と南宋とで分割統治する形が安定することを望んだ。
その際、問題となるのが、岳飛ら旧宋から独立した形となった軍閥と梁山泊である。
*☺☺☺☺☺*
まとめ
楊令伝の第12巻です。
水滸伝の頃からの登場人物の最期が語られます。
夢を追い続けた男の命を捨てて挑む戦いに心を打たれます。
*🀀🀁🀂🀃*
水滸伝、楊令伝、岳飛伝、チンギス紀と続くシリーズは、共通するテーマがいくつかあります。その一つが吹毛剣と楊家の血脈、それと交易。それらがそれぞれ縦糸と横糸になり、織りなす布地の上に男たちの物語が描かれている。そんな作品になっています。
どのシリーズもお薦めですが、ぜひ水滸伝から読み始められると、北方水滸伝シリーズの全体像が把握できて、一層面白く読み進められると思います。
楊令伝<十二>九天の章 北方謙三 1130年頃の中国
少しずつ、飛び飛びで紹介します。
またお立ち寄りください。
どうぞご贔屓に。