就職した年(1992年)に買った分厚い本である。
一人きりで過ごす時間を、持て余していた時期だった。
何度か読みかけて、そのたびに何かの理由で中断してしまった。
そのうち、書棚にあるが、読まない本になっていた。
背表紙が色褪せていくのを横目で見ながら、いつかまとまった時間があれば読もう、そう思う本だった。
コロナが蔓延した春、思いがけずまとまった時間ができた。
暇にまかせて、書棚の本の埃落としをした。
そして、この本を数年ぶりに手に取った。
机の上に置き、一番初めから読み始めた。
そして、引き込まれた。
集中して読んだが、一日では読み終わらなかった。
しかし、その時間を、長いとは感じなかった。
本を開いている間、自分は中東の砂漠の中で呼吸をしていた。
そして、極寒の街を歩いていた。
読み終えて、本を書棚に置いたとき、とても強い酒を飲みたくなった。
砂のクロニクル 船戸与一
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