日蓮宗を奉じていた感応寺は、幕府の禁じた不受布施を行った罪で、天台宗に改宗させられていた。これの復興と新たな寺社の建立を将軍家斉の側室お美代の方の父、日啓が企んだ。日啓は感応寺で催される富くじのもたらす莫大な利益に目をつけたのだ。
さらには、そこに奥州藤原氏の残した金色堂を移そうという話が持ち上がる。それを阻止したい仙台藩、一ノ関蕃の暗躍と、将軍後継者をめぐり派閥争いを続ける幕府重臣たちとがせめぎ合う。
公儀鬼役の矢背蔵人介は、ふとしたきっかけから一ノ関蕃に関わりのある者たちと知り合う。やがて、将軍家斉の命を狙うまでに膨らんだ巨大な陰謀に巻き込まれる。居合の達人、矢背蔵人介は、愛刀の国次を手に、陰謀の黒幕に立ち向かう。
*
ついに光文社時代文庫の書下ろしです。複数の章に分かれていますが、全編通したストーリーで、これまでの各巻とは読み応え感が大分違います。
一番変わったのは、黒幕の描かれ方ですね。短編連作の悪役は、悪徳商人だったり、乱暴者だったり、幕閣で暗躍していても、すぐに成敗されてしまうので、何となく軽い。
本作の黒幕は、いくつもの謎を解決した先にいます。
面白かったです。
間者 鬼役(六)坂岡 真 巨額の富に群がる悪人を裁く
時代物を読むと、その時代の風習や文化などの勉強にもなります。
作家の皆さんも、たくさん資料に目を通してから執筆されているのでしょうね。
またお立ち寄りください。
どうぞご贔屓に。