風花の舞う夜、将軍家鬼役矢背蔵人介は悪徳商人を暗殺すべく、闇に身を沈める。
だが、その矢背蔵人介の目の前で、見知らぬ武士が商人の命を奪ってしまう。
自らの暗殺にしくじった矢背蔵人介はその武士の背後を探る。
そこには飢饉に喘ぐ東北の民の暮らしを踏みにじりながら続けられる、津軽家と南部家の確執があった。
やがて、矢背蔵人介は幕命を果たすため、その武士と立ち会う。
雪の降る中で。
*
将軍家斉の御前で催された武芸上覧で柳生但馬守を相手に勝ったのは、北町奉行所の同心だった。
その試合の直後、同心は姿を消した。
矢背蔵人介は怪我を負った隠密と思われる人物から血判状を渡される。
それには「大塩平八郎」らの名とともに、貧窮に苦しむ民を救うための決意が示されていた。
矢背蔵人介は、姿を消した北町の同心と再開する。
同心は家族との縁を切り、大塩平八郎らの蜂起と呼応し、江戸での謀反を計画していたのだ。
しかし、その背後には、将軍家斉の退位を企む、次代将軍の家慶側近の策略があった。
*
鬼役シリーズ、ここまではキャラクターの姿が丁寧に描かれてきて、読者は親しみを感じるようになっているかと。
で、ここでギヤチェンジをした感じです。
次の巻「大義」、その次の「血路」までは一気読み必至です。
「覚悟 鬼役(八)」 坂岡 真 シリーズの急展開