宿直明けの矢背蔵人介は、雨の中、門番と並んで老中水野越前守の登城を見ていた。
不意に老中水野の乗る駕籠を、刺客が襲った。
駕籠に駆け寄り、刺客の前に立ちふさがった矢背蔵人介に、刺客は何事かを依頼した。
水野越前守は、倒れた刺客の遺体に殴る蹴るの暴行を加える。
刺客が水野越前守を襲った背後には、甲州金をめぐる幕閣内の抗争があった。
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八王子千人同心の組頭の次男坊が、若妻と二人、江戸に出てきた。
矢背蔵人介に昌平黌までの道を聞いた若者は、その直後、酒に酔った侍が切りかかった子供をかばって切られてしまう。
残された妻と、若者の兄は、仇討を図るが、幕府は事件そのものをなかったことにしようとする。
矢背蔵人介は仇討を助けることはできるか。
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本巻は、続く「血路」とぜひ一緒にお読みください。
久し振りに登場する家慶の子、望月宗次郎も活躍します。
「大義 鬼役(九)」 坂岡 真 老中水野越前守の陰