安心感の研究 by 暖淡堂

穏やかに日々を送るための試みの記録

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【現代詩】「展 開」 熱力学法則と言葉の連なりとの接続のイメージ 現代詩の試み

展 開

  

表面を移動するものは波である。波とは強度の粗密である。

近傍領域の記述の試み。微かな光を放つものが埋める白色空間。空間にはじき出されるようにして浮かぶ微小の滴。滴の表面を波が進行する。波は勢いを増しながら比重の不均一な面を走る。先触れ。身構える間もなく不意に滑落し激しく巻き込まれ高く放り上げられる。波頭の通過後表層に多くの小さな渦が残る。渦を目指し暗い底から浮かび上がる泡立つ核。いくつものささやきが一瞬、強度を増す。

 

束ではなく群であること。群を構成する各々は強度の差により明確に他から独立する。

近傍では紐帯群が滴に突入している。滴の表面が激しく泡立つ。紐帯群の根元は視野の端の暗闇に落ちている。複数の紐帯間の接触点(dS/dx)では摩擦によるわずかの溶融が起る。溶融液薄層中に小さな抵抗が存在する。小さな抵抗はいつも逃げ続けている。不意に激しく身をよじる。が、最後は硬い先端で掘り出され滴となって転がり落ちる。

 

不意のずれから、多くのものを読み取れる。そこに我々から剥がれ落ちてしまったものの影を見る。

紐帯群において、構成する各々の加速度は拮抗している。わずかにただ一本、ほぼ中央にあり他を導くように振る舞うものがある。異質な紐帯からなる群のなかで、様々な強度を巧みに翻弄し、いつも頭一つ抜け出るもの。白色の層音界に鉄の冷たい板が何枚も差し込まれる。しなやかに身をくねらせる紐帯群は鉄の板の間隙をすり抜ける。先導する紐帯が突然現れた壁に妨げられ行き惑い、後続する紐帯に一瞬だけ追い越される。その瞬間の陰画。痙攣、どもり、書き損じ。

 

滴。激しく泡立つ核を内包し表面を振動させながら熱を吐くもの。

臨界点を超えた滴が弾け飛ぶ。紐帯群はその熱で蒸発しただ一本を残して消え去る。遥か先まで生き残った紐帯は白色の空間を螺旋を描きながら滑り落ちる。その紐帯が起す振動で一斉に結晶核の成長が起り、再び無数の紐帯が掘り出される。それらはまた彷徨う群となり、空間のどこかで震えている小さな滴を探し、展開する。  

 

*****

 

言葉に属性を与えるものは、いつも遅れてくる。

 

その遅れを取り戻そうとする働きに、摩擦が生じる。

 

摩擦により発熱するものは、その先端が溶けて崩れているのだ。

 

溶けて崩れているものは、だから、その動的な特性の証拠でもある。

 

*****

 

 

制御されるべき、熱の流れ。 

 

 

 

 

 

【現代詩】「展 開」

熱力学法則と言葉の連なりとの接続のイメージ 

現代詩の試み

 

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