こんにちは、暖淡堂です。
極私的京極祭、越年継続中です。
それを終えると、やっと2023年刊行の「鵼の碑」を手にすることができます。
(勝手に自分で決めているだけですが…)
「邪魅の雫」は2006年9月26日に第一刷発行。
時期的に僕は家族と山口県に住んでいた頃ですね。
山口県にあった書店をいくつか覚えています。
山口市内にあった書店は、いくつか無くなってしまいましたね。
で、この「邪魅の雫」もまた、「探偵」の小説です。
このシリーズに登場する唯一無二の探偵榎木津礼二郎。
その「探偵」との縁談話が持ち上がった女性たちが巻き込まれる出来事を中心に物語は進行します。
その出来事はまるで榎木津家か、榎木津礼二郎本人に対して悪意をもった人物が引き起こしているかのように思われます。
それと交錯するように、戦前、戦中に軍部で進められた研究のエピソードも語られます。
そして、それら一連の事件を、自分自身の事件として解決しようと、榎木津礼二郎は自ら動きます。
榎木津礼二郎は、この長い物語の最後の部分で、一連の事件の中心にいた人物と言葉を交わし、この事件に決着をつけます。
「ばかやろう」
「え?」
「馬鹿野郎と云った。君はー本当に馬鹿だ」
「わ、私は、だって」
(中略)
「僕は君が嫌いだ」
私は罰を受けた。
榎木津礼二郎は、そして私の前から去った。
私は、握り締めていた雫を海に放り投げた。
空には空しかなく、
海はただ海だった。
そして私は。
やっと泣くことが出来た。
この作品の底にも、榎木津礼二郎、関口巽、木場修太郎と中禅寺秋彦の友情が置かれています。
そして、ある意味、青春物語でもありますね。
舞台が昭和28年前後に設定されているのも、全体を味のあるものにしています。
「京極堂(中禅寺秋彦)」シリーズは、できれば「姑獲鳥の夏」から順に読むことをお勧めします。
そうなると、もう沼にどっぷりです。
で、その沼は、妙に心地の良いモノです。フフ…