安心感の研究 by 暖淡堂

穏やかに日々を送るための試みの記録

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【現代詩】「風 鼓 祭」 北国の冬の、重たい雪と冷夏の風が練り合わさるイメージ 現代詩の試み

風 鼓 祭

 

家が 鳴る 深夜

低い唸りが 聞こえる

それは 電線が 荒れる風を 切り裂く音

 

厚く 濃密に吹き荒れる 風は

大気から大粒の雨をしぼりだし

弱い生き物の 隠れ家に

叩きつける

 

その風が 細い しなやかな線で

切り裂かれ うめく

線は するすると延びる

暗い 雨の種と 滑る 大気の中を

 

遠くで鳴る こん こん という微かな音が

眠りの中に 染みこむ

それは 風が鳴らす 鼓

家の もろい 境界の外

流れる 濃密な大気との 境目で

生まれる 拍子

 

眠りに落ちる 境目に

それは 風のうなりと 交叉する

雷が 鳴り渡る

雨は いっそう激しく 家を叩く

揺れる木の影が

壁にかけた絵を なぞるように 揺れる

 

こん こん

とん とんとんとん

 

ああ、外では なにが起っているのか

 

ぶぅん ぶぅん

 

もう 眠りの中なのか

 

いくつもの足音が 聞こえる

拍子をそろえて ぬかるみを 踏みしめる

その体温で 沸き上がった湯気に包まれて

古代の 半島の 高麗の衣装をまとった

たくさんの 男達が 舞う

女達は 輿の上で ひそやかに 笑う

 

うぅん そぉい

うぅん そぉい

 

掛け声に合わせて 宙を舞う

赤と 黄と 金の 糸が 延びる

それが

濃密な闇を 埋める

 

角のある面をつけた 

一人の男が 振り返る

そして 駆け出す

行列を 逆行する

人並みが 割れる

その先に 大鳥居

男は その鳥居の下を 駆け抜けた

と 大社殿の後ろで

無数の 花火が 打ち上げられた

その 激しい光は

涙を呼び 深い呼吸を 誘った

鳥居は垂直に激しく延び

平面に 太いくさびを 打ち込んだ

静寂が 地を駆けた

その平面は 時 から ずれ

しだいに 薄れていった

 

文明の 滅び去る様

それは 眠りに 

小角で差し込んだ 忘れられていた 平面

 

さようなら

眠りの波は いつも 頬を濡らす  

 

 

 

 

 

【現代詩】「風 鼓 祭」

北国の冬の、重たい雪と冷夏の風が練り合わさるイメージ 

現代詩の試み

 

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どうぞご贔屓に。

 

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