雨 界
激しく叩く 雨に歪むガラス窓から
立ち現れては崩れる 外の光景をみていると
バスのエンジンは 悪い病のように咳こみ
きつい山道の 小石を弾き飛ばしはじめる
腰から力を奪うのは きまって 悪い熱だ
逃げるのは 悪い手段ではない
平面を 縦断 できるのなら
夜は谷底の村を飲み込むと じわじわと界面を盛り上げ
それに追いつかれないようにと
陽に焼けた赤い顔の運転手は ギヤを鳴らす
その跳躍点を 逃さないこと それだけが
この目を「目」から解放する
最後の たった一つの 技術
薄暗い停留所で バスは重い息を吐く と 運転手は 慌てるように 黄色い帽子 赤いランドセルの 女の子を一人 おろした 前の座席に 静かに 座っていたのだ そうだ 女の子は ここから先は だめだ
斜めに 逃げているのだ
底から 暗い 深い 平面が追ってくる
指の先から それは こぼれ
ふりかえる 闇は静かに 追ってきている
運転手と 目があう ギヤがなる 小石が飛ぶ バスの車体が ゆっくりと 歪み 溶け 床に塗った 油の匂い が 流れ
うまくいくまでは 何度でも 飛ぶ
なくして 惜しい 器官など
なにもないのだから
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【現代詩】「雨 界」 雨の中で形を失うバスのイメージ
現代詩の試み
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