駅 舎
この北国の駅は、古いものだけでできている。プラットフォームにかけられた屋根は、柱も梁も、使い古されたレールだ。そしてその屋根も、もう何十年も使われている。
多くの人たちが利用しているが、帰宅のためにこの駅で降りる人は年々少なくなっている。雪が駅舎の屋根に降り積もる頃、土産物を手に、白い息を吐きながら改札口に向かう人も、もう多くはいない。
春先に、小綺麗な服を着て、新しい鞄を持って、親に見送られて改札口を抜けていく若者たちが、この駅に帰ってくるのは、年にほんの数度のこと。それも間遠になり、やがてその顔を見せなくなってしまう。
次にこの駅に降り立つのはいつのことか。その時に、君たちの親は、まだ君たちを待っているのだろうか。
時間はいつまでも降り積もったままだ。
春先に、溶けて消えてしまうことはない。
だから、この駅はいつまでも、君たちの帰りを、深い雪の中で待っている。
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【現代詩】「駅 舎」
いつまでも静かに待っているもののイメージ
現代詩の試み
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