安心感の研究 by 暖淡堂

穏やかに日々を送るための試みの記録

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【現代詩】「街」 掘り返され続ける都市のイメージ 現代詩の試み

 

 

 

 

空間を切り分ける硝子の目盛りが震え

濁りのない雨が凝り落ち

 (…膨張し…

「底」からの微かな音に揺れる

臆病な「私」達を温かく濡らし窒息させる

 

 …宙を走る文字はどこでも構わない…

 …「今」を「物」にして…

 …それがいくらになるかと…

 …誰のものにもなれる声で呟き…

 

熱すぎた界面は冷め

「私」達は再び固く重なり

 (…軋み…

高い空からの「声」を練り込む風に

乾きながら、「同じ」夢の中に温く沈む

 

 …その巨大な砲台は休むことなく…

 …重く詰まった筒を打ち上げ続ける…

 …遠い「過去」の涯で…

 …渦を巻き、炸裂する枯葉…

 

日陰の雪のように

しかし、「ここ」にある「過去」が

 (…斑に…

立ち上がる高層建築の「底」や

地下道に溶け残る

 

 …書き記された「言葉」が滑り…

 …「古代」の木簡は土に溶け…

 …喰らいながら根は走り…

 …腐る骨を結びながら捻れ…

 

層を斜めに突き抜けるエスカレーターが

「私」達の断片を地上に運び上げ

 (…息を吐き…

剥き出しにされた「祖父母」の街に

「私」達を放り出す

 

       *

 

(その街はいつも夜で、どの窓も灯が消え、信号が多く、無人の車が時折走り過ぎる。坂があり、その先に家があり、その前に立つと、ああ、ここだ、とわかるが、すぐにそこから立ち去るのだ。帰らなくては、と思いながら。)

 

       *

 

地下道の入り口は閉ざされ

エスカレーターは座り込む「私」達で埋まり

 (…もういいだろう…

 (…もう、いい…

触手が縮むように

「私」達は

「私」達に巻き戻される

 

 

*****

 

何度も繰り返し掘り返し作り直され続ける都市。

それは、埋めきれないものたちが常に復活している姿でもある。

 

「私」達はなにを埋めようとしているのか。

埋められたものは、なぜ必ず掘り返されるのか。

 

人間とは、掘り返す者たちのことかもしれない。

 

 

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【現代詩】「街」 掘り返され続ける都市のイメージ

現代詩の試み

 

ただ興味のために地面を掘り返すのは、人間だけかもしれません。

地面の下に、何を求めているのでしょうか。

 

またお立ち寄りください。

どうぞご贔屓に。

 

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