中学校の校舎は鉄筋コンクリート製だった。小学校と同じく、生徒が増え続けている時期に建てられたもので、僕が通っていた頃にはたくさんの教室が使われていなかった。廊下の端には、造りかけで放置されたように鉄筋が突き出したままだった。
その頃、校舎の一隅に用務員さん家族が住んでいて、犬を飼っていた。用務員さんの住居部分は、テニスコートのある場所から校舎一棟分はさんだ反対側にあった。校舎の壁を使った壁打ち練習をよくやっていたが、わざとふざけて打つこともあった。そんなとき、校舎の屋根の上を越えて、犬小屋のそばまでボールが飛んでいくこともあった。
ある日、部員の一人がそのボールを取りにいって、不意に悲鳴を上げた。駆けつけてみると、犬にじゃれつかれていて、ジャージのズボンのお尻の部分を咥えられていた。僕らは、笑った。本人にしてみれば深刻な悲劇だったかもしれない。
現在であればその悲劇の方を重大事とみて、犬の管理責任を飼い主に追及するかもしれない。
僕らはただ笑っただけだった。
*
そういえば、学校の用務員さんって、もういなくなったのでしょうか。
学校に家族で住み込んでいて、いろいろなメンテナンスなどをやってくれていた。
小学校の頃は、学校に石炭小屋があって、そこに教室のストーブで使う石炭を取りにいったりすると、用務員さんが石炭をバケツに入れてくれました。
給食の時も、教室まで運ぶ準備をしてくれていました。
すごくやさしいおじさんでした。
もういないのかな。
昔は、学校で起こった小さな事件は、現場で処理していましたね。
大概のものは笑ってすませていたかと。
今はもうそんなふうには処理できないかも。
この部分は、はっきりと時代が違うのだと思います。
用務員さんの飼っていた犬との小さな攻防のこと(二十八)
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