通っていた小学校の校舎は、古かったせいか、工事が途中で放置されたままになっているようなところがありました。
天井がポッカリと開いたままになっているところもあったりして。
小学生の男子がそんなところを見つけたら、放っておくはずがありません。
僕は、友人に誘われるようにして、そんなところから、学校の裏側に入ってみたりしていました。
【沙河】昭和五一年~昭和五二年 (十五)④
ある日、私たちの教室の掃除用具入れの天井の板がずれていることに気がついた。
身体の小さかった川田君が、板の隙間から天井裏に上がってしまった。そして私を呼んだ。私も身体は小さいので、そこを上がるのは難しくなかった。川田君と同じようにして、私も天井裏に上った。
想像していたよりも明るかった。どこからか、外の光が入ってきているようだった。
木の枠組みがたくさんあって、埃っぽかったが、クモの巣はなく、ネズミもいなかった。教室ごとの仕切りのようなものはなく、棟のずっと向こうの端が見えた。
川田君は、天井裏を移動していた。そして私を手招いていた。
川田君は隣の教室の掃除用具入れの上にいた。私たちの教室と同じように、そこの板も少しずれていた。川田君はそこから掃除用具入れの中に下りた。扉を開いて、教室の中に出た。私もすぐに続いた。
隣の教室には誰もいなかった。川田君と一緒に自分たちの教室に戻った。そこにも、もう誰もいなかった。
数人残っておしゃべりをしていたはずだが、私たちが天井裏にいる間に、帰ってしまったようだった。
ほんの短い間に、教室には西日が差し込む時間になっていた。
「沙河」(暖淡堂書房)から
*☺☺☺☺☺*
学校の天井裏に差し込んでいた光が綺麗に見えました。
ものには裏側があるということを知ったのは、このときだったかもしれません。
学校の天井裏での冒険 午後の教室
【沙河34】
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