安心感の研究 by 暖淡堂

穏やかに日々を送るための試みの記録

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新十津川にあった母の実家で過ごした時のこと、従姉妹たちの部屋 【沙河8】

妹が生まれたとき、1週間ほど母の実家に預けられていました。

一人きりで母方の祖父母や叔父叔母、従姉妹達と過ごしていました。

みんな優しい人たちだったので、とても安心していたように思います。誰もが僕よりもずっと大人でした。

僕も、寂しがる様子もあまり見せなかったようで。

  

冬だったので、家は深い雪に埋もれていました。

とても広い田圃と雑木林に囲まれた家でした。

僕の中の冬の原風景は、母の実家の辺りかもしれません。

  

【沙河】【沙河】昭和四〇年~昭和五〇年 (四)①

  

 母の実家に預けられていたことがある。

 母の実家の土地は我が家のものよりもはるかに広く、小川の流れる沢や森林も含まれていた。そこからはピンネシリの山々の連なりが近くに見えた。

 母の実家へは二通りの行き方があった。

 一つは土地の北西側の縁を流れる川に架けられた小さな橋を渡り、沢を上る道で、町中に出るには便利な道だったが、冬に雪が積もると通れなくなってしまった。

 もう一つは、家の近くを東西に延びる道で、その道を通ると町中に出るには少し遠回りになるが、冬場も近所の人たちが歩いて通るので、雪の中の踏み分け道が出来ていた。

 冬に母の実家に行こうとすると、こちらの道を使うしかなかった。

 この道も浅い沢を渡るが、道の勾配は緩やかだった。

 この道の先にはバス停があった。バス停の側には屋根の低い一軒の家があった。その家は、バス停で待つ人のための休憩所にもなっていた。

 私が母の実家に預けられていたのは、妹が生まれた頃のことだ。

 出産前後の四五日程だったらしい。私は丁度二歳になっていた。

 誰に、どのようにして連れて行かれ、一人きりでその家に置かれたのか、まったく思い出せない。

 そこで過ごした時の光景を断片的に覚えているだけだ。

  

「沙河」(暖淡堂書房)から

 

   

新十津川にあった母の実家で過ごした時のこと、

従姉妹たちの部屋 【沙河8】

 

またお立ち寄りください。

どうぞご贔屓に。

 

 

 

 

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