子供たちだけで遊んでいると、いろいろなことが起こります。
それぞれに自分たちだけでまず対応をしなければいけなかった。
そんな経験が、僕たちを成長させていたのだと思います。
驚いたり、恐怖を感じたりするようなこともありました。
そんな出来事に対して、誰がどのように対処するのかを知り、その後の対人関係も変わっていったのでしょう。
僕自身は大概のことにオロオロとしているだけだったような気もします。
【沙河】昭和五一年~昭和五二年 (十五)②
ある日、小さな事故が起こった。
いつものように西森君や川田君、その他の数人の友だちと野球をして遊んでいた。
転がったボールを拾おうとホームベース近くに駆け寄った西森君の顔に、他の友だちが素振りをしたバットの先が当たったのだ。
西森君は顔を抑えてしゃがみこんだ。一緒にいた友だちが皆、西森君の周りに集まった。
痛そうだった。少し血が出ていたようだった。僕は怖くて、それをちゃんと見られなかった。
すぐに西森君の家まで連れていった。
西森君の家は、学校の近くの教員住宅の一つだった。西森君のお母さんと話をした。お母さんは、西森君自身の不注意を叱った。そして私たちにはもう帰るようにいった。
その後、西森君はお母さんに連れられて病院にいったようだった。
私は自宅までの帰り道、ずっと不安だった。西森君は、明日も学校に来られるだろうか、入院するのではないか、もしかしたら死んでしまうのではないか。
そんなことを考えていて、一晩中不安だった。
翌日、西森君は目元に大きなガーゼを当てて登校した。その姿は痛々しかったが、私は西森君が生きていたことに安心した。
「沙河」(暖淡堂書房)から
*☺☺☺☺☺*
今だったら、子供だけで遊んでいて怪我をしたりすると、遊ぶこと自体が禁止されてしまうかもしれません。
少なくとも自分たちだけで野球をしてはいけないと言われるのではないでしょうか。
バットが身体に当たるとどうなるのか、知らないなんて子供がいないことを願います。
遊んでいた時の事故と、大人たちのおおらかな対応
【沙河33】
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