安心感の研究 by 暖淡堂

穏やかに日々を送るための試みの記録

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【現代詩】「雨に埋る空洞」 汽車に乗ってここから立ち去る子供たちのイメージ 現代詩の試み

雨に埋る空洞

 

冷たい風の吹く春の日

黒い皮袋

鉄の軌道を滑り

暗い穴

鉄の輪を握る白いひとがた

枯れた枝に絡まる 蜘蛛の糸

空間の傷

 

一人暮しの春 窓硝子を歪ませる

ぬるい雨に溶ける 空洞

次第に近寄ってくる音を怖れ 工場群の

遠く響く金属音に紛れこむ

真夜中の激しい腹痛

 

子供の頃

風が吹き去った後

木の下に不意に現れた 小さな猫

の死骸 立ち上がる鬼面の人影

暗い階段 温かく湿った布団 この

深い空洞から引きずり出す修学旅行

行きたくない 谷底

 

を滑る汽車の回転する座席

客が開け放たれた扉から 何人も

外に投げ出されそこに生まれたばかりの猫

の子が

たくさん

捨てられて

 

獣の酸のような匂い

一群が空にゆっくり と落ち

谷が埋らない

捧げられた血や脂 は潤滑よりも抵抗と

汽車はまだ停車する駅/理由が

ない、しかし

 

連結された石炭車にはもう

燃やすべきものが残っていない

遠く

獣の鳴き声

回転する不安定な座席

もう

取り上げられる

  

 

 

 

 

 

【現代詩】「雨に埋る空洞」

汽車に乗ってここから立ち去る子供たちのイメージ 

現代詩の試み

 

またお立ち寄りください。

どうぞご贔屓に。

 

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