加賀前田藩の宿老本多政長が江戸城に現われる。加賀藩江戸藩邸での不祥事の弁明をするために登城したのだ。
本来であれば加賀藩江戸筆頭家老の横山大膳が出頭するはずだった。
横山大膳は直臣への取り立てを願い、大久保加賀守とともに、加賀前田藩を陥れる陰謀を練っていたのだ。
その大膳を押しのけて藩の宿老、堂々たる隠密とも呼ばれる本多政長が、本多家の宿敵、老中大久保加賀守らを相手に口火を開く。
弁明を済ませた後、将軍綱吉に謁見する。その場で直江兼続が徳川家康に出した「直江状」の秘密が明かされる。
江戸城での舌戦を終えた本多長政の下城を、横山大膳らが送った刺客が狙う。長政の娘婿、瀬能数馬は守り抜けるか。
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上田秀人さんの作品。講談社文庫には、この他に「奥右筆秘帳」のシリーズがあります。すでにシリーズは完結しています。面白いので、ほぼ一気に読み切ってしまいました。
「留守居役」シリーズの本多長政もそうですが、上田秀人さんの作品に登場するキャラクターは「饒舌」ですね。剣戟よりも、おしゃべりで読ませる感じです。それがまた面白い。(もしかしたら、上田さんがレイモンド・チャンドラーを翻訳すると名作になるかもしれません。)
この巻では、本来の主人公瀬能数馬の影がこれまで以上に薄くなってしまいました。まあ、本多長政にはまだまだ敵わないということでしょう。
本田長政の娘琴(こと)、嫡男の主殿正敏(とのもまさみち)らも魅力的に描かれています。
上田秀人さんの作品、未読の方、このシリーズお勧めです。
「舌戦」 百万石の留守居役(十三)上田 秀人
言葉と剣と