上田秀人さんの小説のファンは多いかと。
剣戟シーンもとても面白いのですが、言葉で挑む舌戦にも息を呑みます。
この「百万石の留守居役」シリーズは、加賀前田藩の宿老本多政長の娘婿、瀬能数馬の成長を描いています。
シリーズ前半の、徳川将軍位継承での波乱を自らの剣の腕で乗り切った後、瀬能数馬は江戸で留守居役として加賀藩のために働きます。
そこで、瀬能数馬は義父本多政長によって鍛え上げられます。
第十七巻では、その一応の仕上げ。
シリーズ最終巻になります。
江戸城にいる重臣や、紀州藩藩主の仕掛けた加賀藩への難題を、本多政長に助けられながらも無事に切り抜けます。
上田秀人さんのシリーズものをいくつか読んで、気づいたことは以下になります。
剣戟だけでなく、舌戦も見もの
大人気シリーズになった奥右筆秘帳などもそうなのですが、主人公が剣の達人であったとしても、それを支える存在として頭も口も切れる人物が登場します。
その人物が主人公を援護するように舌鋒で敵に切り込みます。
その論理展開が鮮やか。
剣戟に劣らず、手に汗握る展開も繰り返されます。
それが上田秀人さんの作品の魅力でもあります。
師と弟子というテーマ
「百万石の留守居役」シリーズの本多政長と瀬能数馬とは、義父と娘婿という関係ですが、それ以上に師(先達)と弟子であるかのような結びつきがあります。
本多政長は瀬能数馬の資質を見抜き、さまざまな場面を利用して鍛え上げようとします。
それは、加賀前田藩の宿老に連なるものとしての基本的な教育に過ぎないのかもしれません。
瀬能数馬はそれに耐え、逃げ出さず、次第に成長していきます。
その過程を追うのも、上田秀人さん作人を読む楽しみですね。
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上田秀人 「百万石の留守居役十七 要訣」
壮絶な舌戦の果て
上田秀人さん、時代物の人気シリーズがたくさんあります。
そのどれもがとても面白い作品です。
未読の方は、一度手にとってみてはいかがでしょうか。
きっとハマります。
またお立ち寄りください。
どうぞご贔屓に。