「不均一系触媒」と呼ばれる触媒がある。
言葉のイメージからだと、不均一な、なんだか形のそろっていない、組成もばらばらな触媒の寄せ集めのようなものかと思ってしまう。
実際の不均一系触媒は、それなりにしっかりと均一に調製されている。
均一でない場合は、それなりの理由があって、その理由に合わせて、そうなるように設計されているのだ。
では、実際は不均一ではない触媒を、どうして不均一系触媒と呼ぶのだろうか。
歴史的には、まず均一系触媒があった
触媒反応のうち、代表的な酸・塩基触媒反応を例に、触媒の歴史をざっくりと振り返ってみたい。
日本の酸触媒反応研究の第一人者、(故)田部浩三先生(北海道大学名誉教授)の書かれた「酸・塩基触媒の歴史」が以下のリンク先で読める。
「酸・塩基触媒の歴史」田部浩三、触媒懇談会ニュース vol.57, August 1, 2013
このなかで、「酸がでんぷんを糖に転化する反応の触媒となることが報告されたのが1810年代のこと」という内容の記述がある。
日本では江戸幕府第11代将軍徳川家斉の頃である。
この、でんぷんを糖に転化(なるということ)する反応は、ショ糖(砂糖)を経由してグルコース(ブドウ糖)やフルクトース(果糖)、麦芽糖などが生成する。
これは塩酸や硫酸などが触媒として効く、酸触媒反応である。
反応系は水とでんぷん、それに触媒となる酸だけからなる。
全体は均一である。
一つの液相の状態である。
均一な液相の中で酸が触媒として働いている。
この場合、酸は均一系触媒と呼ばれる。
触媒が、このように均一な一つの相(液相とか、気相とか、固相とか)の中で働くとき、均一系触媒反応となる。
不均一系の酸触媒の例
例えば、触媒が固体であり、反応物が気体である場合、固相と気相で相が違うので、不均一系の触媒反応となる。
例としてシクロヘキサノンオキシムからεーカプロラクタムを製造する気相ベックマン転位が挙げられる。
そもそもこのεーカプロラクタムを製造するベックマン転位は、液相中で濃硫酸を触媒として行われていた。
均一系の酸触媒反応だった。
それを固体のゼオライトを触媒として用い、シクロヘキサノンオキシムを気体にして触媒として接触させる、という形の反応にした。
固相のゼオライトと気相のシクロヘキサノンオキシムが反応するので、不均一系触媒反応である。
まあ、大体は不均一系触媒は固体であり、反応する物質は気相あるいは液相にある。
なので、不均一系触媒とは、ほぼ固体触媒のことである。
不均一系触媒反応が起こるところ
ここでちょっと知って欲しいのが、触媒として働く酸(酸点ともいう)は、固体側の表面、固体と気体の界面にあるということ。
異なった相の、ちょうど中間で働いている。
固相の中でもなく、液相や気相の中でもない。
その、間。
そこで起こっていることを研究するというのが、触媒研究の面白みであるといえる。
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不均一系触媒は不均一な触媒ということではない

dantandho
