2010年10月になった頃。
夕方から夜にかけて大雨が降ることが増えてきていた。
現地の人によれば、そろそろ雨季が終わるので、大雨が多いのだということだった。
場合によっては、洪水があるかもしれない、と不安にさせるようなことも言っていた。
出向先の会社でイノベーションセンターを建設。
その立ち上げを記念して植樹をした。
植樹には現地の人たちも参加。
植樹をしている間、スタッフが何枚も写真を撮っていた。
CSRの広報担当の人だったようだ。
僕も現地のメンバーの一人として何枚かの写真に写っている。
その頃にはすっかり日に焼けていたので、見た目は現地の人にすっかり馴染んでいた。
肝心のイノベーションセンターの建設工事は、僕の目には、進んでいるのか、止まっているのか、あるいは逆行しているのかがまったくわからなかった。
現場で働く人を客として見込んだ、現地のリヤカーのキッチンが急に増えていた。
道端にリヤカーベースの簡易レストランが建ち並ぶようになっていた。
鶏なのか、その他の動物なのか、よくわからないものの丸焼き(あるいは丸揚げ)をぶら下げたリヤカーもあった。
噂ではノネズミなども食べるそうなので、とても気になった。
食べたいと思って気になったのではなく、知らないうちに食べさせられているのではないかと、ちょっと心配したのだ。
ノネズミを食べるくらいなら、まだカエルの方がマシな気がしていた。
カエルであれば、山口県で暮らしていた頃、焼き鳥屋さんで食べたことがあった。
タイでの建設工事は、途中で放置されるものも多いようだ。
バンコクに向かう高速道路から、大きな建設途中のビルが見えるが、それがいつまでたっても完成しない。
そのビルは、僕の現地駐在期間が終わる頃になって、解体されることが決まったようだった。
そのあたりのいきさつは、現地の人に聞きそびれてしまった。
シラチャで暮らしていたサービスアパートのベランダから、現地の小学校が見えていた。
その隣の空き地で、大規模な工事が進められていたが、それがある日、大きなサッカーグラウンドの姿となった。
サッカーグラウンドの形になった、そのすぐ後に、もう試合が行われていた。
後半はどう考えても突貫工事。
コンクリートがそんなに早く強度がでるものかどうか、心配になるくらいの早さだった。
タイは、気温が高いからだろうか、と、好意的にみても、それはとても早かった。
で、早速試合。
我が家のベランダからは、試合が無料で見られた。
「シラチャFC、シラチャFC」と連呼するテーマ曲が繰り返し流された。
応援する人たちの歓声も響いた。
その声が、我が家の窓ガラスを響かせるたびに、観客席が無事かどうか、心配になったものだ。
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