安心感の研究 by 暖淡堂

穏やかに日々を送るための試みの記録

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「今昔百鬼拾遺 月」 京極夏彦 京極堂不在の東京で

京極夏彦,今昔百鬼拾遺月

今昔百鬼拾遺 月

 

こんにちは、暖淡堂です。

極私的「京極祭」、なんだかもう、終わりませんね。

読もうと思って、積み上げている本を熟成させているうちに、どんどん新しい作品が出てきます。

今年は、特に多かった気がします。

それも話題作が。

仕事している場合じゃないよなあ、なんて、思ったりしたいところ。

でも、しっかりと自制して、頑張って通勤しますが。

 

今回は、熟成期間が長くなっていた「今昔百鬼拾遺ー月」。

これは短めの長編が3作まとまったものですね。

それぞれが独立した作品として発表されていましたが、最終的に講談社がまとめて一冊にした感じのものです。

「鬼」、「河童」、「天狗」。

それぞれで文庫本としても入手可能です。

分厚い本を持って歩いて、手首を鍛えたい方は、この合本版をぜひ入手してください。

 

舞台は東京、それと千葉。

登場人物は、「絡新婦の理」に登場した呉美由紀。

それと中禅寺敦子。

タイミング的には「鵼の碑」に関連して、中禅寺、関口、榎木津らが東京を留守にしている時期になります。

 

三つの事件が描かれますが、どれも中禅寺敦子が事件を解き明かします。

ただ、呉美由紀の存在も欠かせません。

中禅寺敦子だけであれば、ある意味、ちょっと妖怪趣味のミステリーで終わってしまいます。

そこに、本格ミステリーの旗艦的存在、島田荘司さん風の味付けがあります。

それが呉美由紀の一連のセリフ。

 

「何でもかんでも戦いに持ち込んで、無理矢理優劣付けて、上に乗った方が偉いとか、買ったとか負けたとか、馬鹿じゃないですか。(中略)少数派だから切り捨てるんだとか、対立しているから潰せとか、本気で頭悪いですよ。一体何を信じてるんですか。その先に何があるんですか。教えてくださいよ!」

「もう宜しくってよ、美由紀さん」

 美弥子は静かにそう云った。

「わたくし、先程までこの親子をぶん殴ってやりたかったのですけれどー」

 もうその気は失せましたわーと、美弥子は静かに云った。

 

講談社文庫「今昔百鬼拾遺 月」京極夏彦、p1080

 

呉美由紀の、三作品における立ち位置は、少しずつ明確になっていきます。

それは、中禅寺敦子のキャラクターでは表現しきれない「正義感」のようなもの。

それを、まだ10代の呉美由紀の、純粋な立場からの言葉に載せている。

そんな感じがします。

 

ちなみに、この本は、文庫版ですが、1000p以上あります。

通勤中の読書に不慣れな方には、正直お勧めできません。
まずは薄めの文庫本から始めて、片手でページ捲りができるようになってから、この本に挑まれるのがよいかと思います。
分冊版もあります。

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dantandho

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