安心感の研究 by 暖淡堂

穏やかに日々を送るための試みの記録

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【現代詩】「偽私」 発熱するだけの機械 なにも生み出さず 



 

偽私

 

 

(…ぬるい寝床を走る繊毛…

 

(…いくつもの眼、小さな歯…

 

(…肌を焦がしながら分断し…

 

(…、…、眠れない…、…、…

 

 

 

紐が捩れながら束になり

 

甘く肉の焼ける匂を追い

 

分散し数匹の蟻になり

 

穴を開け押し広げ潜り

 

「層」の断片を掘り出し

 

膨れ上がる赤い腫瘍

 

震える蟻塚

 

 

 

(…やがて落ちる「洞窟」…

 

(…奥からの湿った風に怯え…

 

(…重く流れる川、深い溝…

 

(…何度も阻まれて…

 

 

 

やがて辿り着く

 

遠く厚く溜まる「底」

 

冷たい指で胸を裂き

 

見慣れた横顔

 

(…「親」…

 

が、立ちふさがる壁を突き抜ける、と

 

昨日の、まだ熱を吐く機械

 

(…「私」達…

 

の群が渦を巻き

 

それ、を取り囲み

 

同じ顔で、笑いながら

 

「私」を、押し潰す

 

 

 

(…野性の「涯」で呼ぶ声に振り返り…

 

(…渦の中心で腐り、崩れ始めた…

 

(…無数の「胚」が…

 

(…無数の「私」が…

 

(…中心の穴から零れ落ち…

 

 

 

 また一人、「私」が浮かび上がる 

 

*****

 

いつも同じ「私」であることの不思議さ。

それから目を逸らし続ける頑なさ。

 

目を覚ますと、この同じ「私」として生き始めている。

 

底から無数の意識の芽が伸び、その速度を競い、勝ち残ったものだけが「私」を勝ち取るはずなのに。

それは、なぜかいつも同じ「私」

 

その不思議さ、頑なさの、仕組みの奥に、何かあるのではないか。

 

動き続けていた機械が静止したとき。

遠赤外線の形でこの肌に届けられているものは何か。

なぜこの肌は、静止した機械からさえ、何かを受け取ることができるのか。

 

仕組み。

「私」であり続けるという仕組み。

そこ、にあるものを感じ続ける仕組み。

 

いつも同じ「私」であり続けることを、もっと驚きの思いで把握すべきだ。

そこには、時には嫌悪の思いがあってもいい。

 

 

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【現代詩】「偽私」

発熱するだけの機械 なにも生み出さず 

 

自作の現代詩です。

またお立ち寄りください。

どうぞご贔屓に。

 

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