駅/発酵
(…ああ、季節が、かわる…
…散り積もった枯葉、を、掻き分けるように掘る、と、底、に…
…じゅくじゅく、と、醗酵し始めた厚い腐葉土の層、さらにその、下、に…
…雨、が、近づいてくる、その響きが指先に伝わる、雨は、深い底で、降っている…
…鼻、先、を過ぎる風の、生臭さ、思いがけず、首筋を撫でる、風の、冷たさ…
…不意、に、触れる、硝子、それは掘り出された、小さな窓、その中、に…
…滑落、濡れた、冷たい床、木の長椅子、枯葉の壁が塞ぐ、出口のない改札口…
…雨が、屋根を叩く音が、聞こえる、窓を塞ぐ枯葉の層が、ゆっくりと溶け…
…改札口に、いくつもの人影が立つ、そして、静か、に、待っている…
(…ああ、すべて、ここ、から…
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深い森の中にある駅のイメージ。
その駅の奥には無数の機関車、電車、列車が停められている。
そして、長い時間の中で、朽ち果ててしまっている。
しかし、暗い夜、いくつかの機関は目を覚ましたように、低く唸り始める。
レールを埋める、厚い枯葉の層を、雨が叩く時。
立ち上がるのは、置き去りにされた「私」。
静かに停車する列車に乗り込むのは、「私」。
しかし、どこへ旅立つのでもなく、帰り着いたのでもない。
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【現代詩】「駅/発酵」
旅立つ人も、帰り着く人も、もう誰もいない駅
自作の現代詩です。ブログを始めた頃は、こんな感じの詩を書いて発表していました。またお立ち寄りください。どうぞご贔屓に。
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