まだ「い」に進んでいません。もっとずっと先の作者のものを並行して読んでいたりはするのですが。
で、今回は麻倉一矢さんのこの作品。将軍の影法師シリーズの第一作目ですね。暖淡堂はシリーズ(シリーズキャラクター)ものが好きで、時代物に限らずたくさん読んでいます。
現時点でハマっているのは北方謙三さんの「水滸伝」のシリーズ。「ジンギス紀」まで、二回り目を読んでいます。時代物だと「剣客商売」(池波正太郎)、「鬼平犯科帳」(池波正太郎)、「用心棒シリーズ」(藤沢周平)、居眠り巌根シリーズ(佐伯泰久)などなど。
一番最近読んでいるシリーズものでは「鬼役」(坂岡真)などがあります。
この麻倉一矢さんの作品は「あ」の作家の流れで読んでみました。とても面白く読めました。この本を読みながら思ったことを書いてみたいと思います。
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シリーズものの始め方
シリーズものの始め方の流儀のようなものがありそうです。なんといっても登場するキャラクターの魅力。この造形がうまくいかないと人気が続かないでしょう。またシリーズの舞台設定も面白いものである必要がありますね。この設定は、多少は無理があっても、シリーズとして続いていくことで説得力を得てくる気がします。
脇役陣も必要。時代物だと、頼りになる相棒や助っ人がいると、安心して読み進められます。主人公が危機に陥った時にも、きっとこの人物が救いにくるだろう、という期待を持って読み進められます。
そして、シリーズ全体の伏線。これはシリーズ化されるのだろうな、というのが、読んでいる途中でわかるときがあります。今読んでいる作品中では回収できないだろうと思われる伏線に気づいた時ですね。それがあると、むしろ次回作以降への期待が湧きます。
これらが巧みに盛り込まれていると、シリーズものとして成功するのではないでしょうか。
シリーズものの難しさ
一方で、シリーズものとすることを狙って書かれたものの第一作目を読んでいて、時々辛くなるものがあります。今後の作品で主要なキャラクターとなるだろう人物たちを、第一作目に伏線的に登場させることはよくあると思います。が、その人物が多くなってしまうと、読みにくくなってしまいますね。
長いシリーズには、たくさんの登場人物が出てくるのですが、それらはそれぞれの話の内容と結びついて出てくるので、読者の記憶に残ります。一方で、将来的に登場する人物を第一作目に登場させると、その人物と結びつくエピソードが無い状態で、ほぼ名前だけが出てくるようになります。
そういう人物が多くなると、読みにくくなってしまいます。シリーズものが好きな読者であれば、きっとこの後、なんらかの出来事で活躍するのだろうな、と思いながら読み進めることができるのですが。
「拝命 将軍の影法師」の面白さ
この作品の魅力は、江戸城内での剣戟シーンを想定した小太刀の達人である、将軍家の身内である、居酒屋などにも顔見知りの多い庶民派であること、芸者や飲み屋の女将、大名家の姫などから思いを寄せられる好男子であること、などがあげられます。
暖淡堂はさらに、麻倉一矢さんの描く徳川家の柔軟さを加えて良いと思います。将軍の側近の振る舞いや江戸城内での決まりごとの理解など、独自の語られ方があります。
その辺り、ぜひ期待してお読みください。
シリーズものの始め方の流儀
麻倉一矢 「拝命 将軍の影法師 葵慎之助」
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