椎名家の家族は、それぞれ自分の足で歩き続けている。
自分自身の時を、自分自身の波長で生きている。
波は、振幅が異なれば打ち消し合うこともある。
しかし、振幅がそろえば、強め合う。
長い旅暮らしの中では、心身に不調をきたすこともある。
椎名さん自身もそうだが、家族それぞれに山もあり谷もある。
奥さんの不調に対し、奥さんご自身で出した答えが、チベットへ行く、だった。
家族は心配するが、奥さんはその旅の過程で、次第に自信を、自分を取り戻していく。
以前の自分に戻るのではなく、何かを乗り越えた先の、自分の軌道に戻って行く感じだ。
椎名家の家族は、ある年の正月を、余市の山荘で過ごすことになった。
久し振りに家族全員が揃う。
雪に埋もれたような山荘の中で、ストーブのある部屋に集まり、食事をしながらなんでもないことを話し合う。
そんな時を過ごすために、その場所に帰ってきたような気がする。
のんびりとした、優しい時間が流れている。
自分も、移動の多い暮らしをしてきた。
コロナで、すっかり家にいることが多くなった。
嫁さんと話をする時間も長くなった。
この時は、帰って来ているのだろう。
自分にとって、コロナによる生活の変化は、悪いものではない。
愛読書の一冊です。
なぜかたまらなく切なくなることがあります。
自分のこれまでの暮しを振り返るからでしょうか。
よい休日をお過ごしください。
椎名誠 「帰って行く場所」 旅の小休止の時
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