ボルヘスは結婚を申し込むことになる女性に、物語を贈った。それが短編小説「アレフ」である。ボルヘスはノートに書き込んだ草稿を手に彼女のもとを訪れた。それをボルヘスが読み上げ、その女性がタイプライター原稿にした。その女性はエステラ・カントといった。
「階段の下のほうの右手に、耐えがたいほどの光を放つ、小さな、虹色の、一個の球体を私は見た。最初は、回転していると思った。すぐにその動きは、球体の内部の目まぐるしい光景から生じる、幻覚に過ぎないことを知った」(ボルヘス「アレフ」鼓直訳、岩波文庫)
やがて解体されることになる建物の、地下室にアレフはあった。アレフを、この世のすべての地点から見ていた。同時に、アレフを通して、すべての地点を見ていた。地球上のもの、さらにその先の宇宙の涯のもの、大きなもの、小さなもの、現在のすべて、過去のすべて、個人的なもの、全てのものに共通のもの。アレフは「想像を絶する、宇宙」であった。
久々に充実した読書ができました。
本書は大人の読書家の方にお勧めです。
引き続きどうぞご贔屓に。
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