この本は、11年前、バンコクの伊勢丹にあった紀伊国屋書店で購入した。
ちょうどその頃、タクシン派と反タクシン派との衝突があって、赤Tシャツと黄Tシャツのチームに分かれて、それぞれ夜毎に大宴会のようなことをしていた。
バンコク市街地はところどころにバリケードが築かれ、騒がしかった。
駐在員やその家族は、バンコクに行くのは控えるようにしていたが、騒動が一休みになった隙に、家族そろってバンコク市街地に出かけた。
どうしても、日本の本屋さんに行きたかったのだ。
自宅を出る時はかなり緊張していたが、伊勢丹のあるセントラルショッピングセンターの駐車場に車を入れると、外の騒がしさはまるで聞こえてこなかった。
セントラルショッピングセンターの一部が、デモ隊によって放火された跡が痛々しかったが。
そんな状況で、この本を買った。
岸本さんの本は、「気になる部分」をすでに読んでいて、どのような内容になっているかは予想がついた。数ページ立ち読みして、もう平積みの山に戻せなくなった。
なんだろう、と思いながら、知らず知らず最後まで読み続けてしまうタイプの本だ。
自分も、こんな文章が書けないものだろうかと、考えたこともある。
うまくいえないが、方向性はナンシー関さんに似ていると言えるだろうか。
あるいは、ある意味SF(Speculative Fiction)でもある。
時間があって、なにをしてもいい時の読書にお勧めである。
読後、人生になんらかの影響を及ぼす可能性もある。
それが激しく困る方は、近づかない方がよい。
ねにもつタイプ 岸本佐知子
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